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迷惑のかからない個人の趣味嗜好~前編~

「……ウリエルに協力してもらったらどうかな?」


 人間の姿になっているブラックドラゴンのおじいちゃんが、ハデスに話しかける。


「ウリエル……か」


 ハデスが何かを考えながら呟く。


 ウリエル……

 わたしをこの世界に転移させた天使。

 ベリアルをアレした時に酷い事を言っちゃったんだよね。

 ちゃんと謝らないと……


「そうだな。あいつは信用できるぞ?」


 ベリアルは最近、ウリエルと仲良しなのかな?

 この前も、わたしとハデスを引き離さないで欲しいって頼んでくれたみたいだし。


 ウリエル……

 ウリエル?


 人々を正しい道へと導く大天使……


 ん?

 ペルセポネが教えてくれたの?

 正しい道に……導く?

 あの時、結構悪い天使に見えたけどな。

 

 ……?

 あれ? 

 何か記憶が蘇ろうとしているみたい。

 頭が、ぼーっとする……

 小さい頃のペルセポネ……かな?

 ドレッサーの鏡に映っているね。

 身支度をしているのかな?

 白い髪に青い瞳がかわいいね。

 人間の五歳くらいの大きさかな?


 ん?

 鏡の端に誰か映っている?

 ……あれ?

 前に会った時より若い感じだけど、ウリエル……かな?

 うわあ……

 確実にわたしの支度を覗き見しているね。

 顔が、にやけているよ……

 

 まさか……幼女好き?

 いやいや、そんなはずは……

 それともペルセポネをかわいがってくれていた……とか?

 ウリエルは神様の補佐をしているんだよね?

 神様の娘のわたしをかわいがってくれていたんだよね?

 きっとそうだよ!


「ウリエルには……頼りたくないな」


 ハデスが呟く。


「ウリエルはファルズフに寝返るような事は無いはずだよ?」


 おじいちゃんがハデスとの話を続ける。


「……そうだろうな」


「じゃあ、助けてもらおうよ?」


「……奴に恩は作りたくない」


「え? どうして? よく知っている仲なのかな?」


「いや、話した事は数回程だった」


「……? えっと、じゃあどうして嫌なのかな?」


 おじいちゃんはウリエルを信頼しているみたいだね。


「もしも、わたしとルゥに娘が産まれたら……」


「……? 娘が産まれたら?」


「奴は、この事を恩に着せて近づくだろう」


「え? それは……?」


「ペルセポネが……冥界で話してくれた。もし娘が産まれたらウリエルにだけは気をつけないと……とな」


「……? どういう事かな?」


「ペルセポネが幼い頃……ウリエルの私室で隠し部屋を見つけたらしい。そこには……幼女の絵姿や精巧に作られた人形が大量にあったらしい……」


 人形?

 フィギュアみたいな?


「……え? あ……(そっちが好きなんだね……)」


 おじいちゃん?

 そっちって、どっち?


「個人の趣味嗜好を、とやかく言うつもりは無いが……ペルセポネも幼い頃は気づくと見つめられていたそうだ。幼女を見つめて脳裏に焼き付けて、部屋に帰り精巧な人形を作る事が趣味だったようだ……ペルセポネが成長したら、それもなくなったようだがな」


 待って?

 という事は……


「……じゃあ、ウリエルの部屋にはペルセポネの幼女時代のフィギ……人形が大量にあるっていう事?」


 想像したらゾワッとしたよ……


「……だろうな」


 本人がいない所でへきをバラして申し訳ないな……


 あれ?

 急に眩しくなった。

 目が開けていられないよ。

 天界からお父様が来るのかな?


 光が消えると……


「……あれ? ウリエル?」


 何とも言えない表情のウリエルが立っている。

ベリアルをアレした時のお話は73話『第一部天族編 もう取り戻せない』に書かれています。

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