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自殺じゃなかった? ~前編~

「おじいちゃん? その本には何が書いてあるの?」


「うん……イナンナを酷い目に遭わせた奴らの悪行が書いてあるんだ。誰があの件に関わっていたか分からなかったからね。全ての天族の小さな罪も全部書いてある」


 さすが、先代の神様だね。

 今の神様のお父様は、ちゃんと仕事をしているのかな?

 心配になっちゃうよ。


「うわあぁ! すごいね! ……で、この本で何を調べるのかな?」


 考えてみたら、わたしは今の状況を何も知らないんだった。


「ルゥ……全て話そう。だが、分からない事だらけなのだ。ペルセポネだった頃の事を思い出して具合が悪くなったらすぐに言うのだぞ?」


 ハデスが手を繋いで、空いている広場の椅子に座らせてくれる。


「うん。分かったよ……」


 怖いな……

 どんな話なのかな?


「ファルズフ……という名を覚えているか?」


 ファルズフ?

 誰かの名前なのかな?

 

「分からないよ……誰かの名前?」


「そうか。無理に思い出す事はない。今は体調も優れないからな。無理は絶対にダメだ」


 ハデスは優しいな。


「うん。……それで、そのファルズフ? が、どうかしたの?」


「ああ、ペルセポネの主治医だった男だ。自害したペルセポネを発見したらしい」


「……? わたしは、お母様が見つけてくれたんだと思っていたよ」


「そうなのか? ……それは何故だ?」


「……うん。ペルセポネの時の記憶が……そう見せてくれたから」


「そうか。どんな記憶か教えてくれるか?」


「モヤがかかっているの。……血まみれのわたしをお母様が抱きしめて泣いているの。それで、わたしがお母様に『ごめんね』って謝っていて『お母様には生きて欲しい』って言っている姿を見たの」


「……デメテルの話と同じだな」


「……? じゃあわたしは自殺したっていう事だよね? 自殺した天使は肉体も魂も消えちゃうんだよね? でも魂だけはお母様が前の世界に逃がしたって言っていたよ?」


「……ルゥ、今日おばあさんの家で寝ている時にペルセポネが……言葉を残したのだ。ペルセポネの身体をあの男から取り戻して欲しいと……」


「え? ペルセポネが……? あの男?」


 最近ペルセポネの記憶が戻る事が多かったけど……

 まさか、本当に全ての記憶が戻ろうとしているの?


「それが事実ならペルセポネはファルズフに殺害された事になる」


「……え?」


 自殺じゃなかった?

 まさか……

 でもどうして、そのファルズフはペルセポネを……?

 ペルセポネは神様の娘なんだよ?

 そんな事をしたら無事ではいられないんじゃないかな?


「ルー……聞いてくれ。前に話したな。オレらに昔、魔術の使い方を教えてくれた男がいた。その男は……天使だった」


 え?

 雪あんねぇ

 それはどういう事?

 天使が第三地区に出入りしていたの?

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