男の書斎にある物は?
ずっとハデスと一緒にいる為には、ペルセポネの身体に戻らなければいけない。
お兄様と話した事で、揺れていた心が進むべき道に動き始めた。
リコリス王国から第三地区に帰ると、広場で皆が話し合いをしているようだった。
わたしを傷つけない為に、わたしがいない間に話していたんだね……
「ルゥ……早かったな」
ハデスが優しく微笑んでくれる。
「……うん。皆に話したい事があって……」
ちゃんと気持ちを話そう。
「あのね……皆に聞いて欲しいの。わたし……わたしは、ペルセポネの身体に戻りたい! まだ、身体があればだけど……」
そうなんだよね。
本当に身体が残っているのかな?
「ルゥ……そうか」
ハデスが優しく抱きしめてくれる。
「ハデス……ずっと一緒にいたいよ。もう離れたくないよ」
「わたしもだ……ずっと一緒にいよう」
ハデスの甘い匂いと胸の音に心が落ち着く。
「月海……決めたんだなぁ。それでいい。自分の幸せを一番に考えてくれ。群馬じゃ、ずっとオレの事で迷惑かけちまったからなぁ」
おばあちゃん……
夢遊病の事かな?
あれは大天使がやった事だから気にしなくていいのに。
「月海……お父さんも、月海の幸せを願っているよ」
「ありがとう。おばあちゃん、お父さん。でもね? どうしても思い出せないの。あの時、何があったのか……」
「……あの、考えたのですが」
あれ?
イフリート王?
来てくれていたんだね。
「神が遥か昔に、聖女様の幸せの島での赤ん坊の姿を見て来たと聞きましたが……その力で知りたい過去を見て来る事はできないのですか?」
「……残念だが。あのバカにはもうその力は無い。あれはかなりの力を使う。何千年もの時間を移動するのは一度が限界だというのに、ペルセポネの身体を作り出す為に何度も時間を動かしたからな」
「そうか……無理か……」
イフリート王が残念そうにしている。
お父様は、そんなに大変な事をしてくれていたんだね。
「過去の記憶を取り戻す……か」
吉田のおじいちゃんが真剣な顔をしている。
やる時はやる人だからね。
何かいい考えがあるのかも。
「滝行……」
「え? 今、何て言ったの?」
「滝行はどうだ?」
滝行って、冷たい滝の水に打たれるあれ!?
「雪が積もる冷たぁい滝に打たれれば記憶が戻るかもなぁ」
……!?
常夏の島でぬくぬくと育ってきたこの身体には厳し過ぎるよ!
無理無理!
絶対無理!
でも……
どうしても思い出さないといけないし……
「イマノ、ルーチャンノカラダハ、ヨワッテルカラ、ムリダヨ」
え?
ピーちゃん?
「ピーちゃん! 遊びに来てくれたの?」
「ブラックドラゴンニ、タノマレテタ、コトガ、アッタノ」
おじいちゃんに?
「ウン。オカアサンガ、ネタアトニ、テンカイニ、イッテキタンダヨ」
野田のおばちゃんが寝た後に?
そうだよね。
長い時間いなくなったら心配するよね。
「シームルグ、ありがとう助かったよ。(頼んだ事もしてくれた? )」
「(ウン。エッチナモノハ、ショブンシテキタ)」
ん?
おじいちゃんとピーちゃんが内緒話をしている?
「「「ぷっ!」」」
耳のいい魔族達には聞こえたみたいだね。
わたしには聞こえなかったよ。
皆どうして吹き出したのかな?
「ブラックドラゴン……あなたそんな、いかがわしい物を隠し持っていたのね……」
ばあばが呆れている?
「おじいちゃん? 何を隠していたの?」
笑う程おかしい物?
何だろう?
「え? あの……えっと……貴重で重要な書類……だよ?」
「貴重で重要な書類? さすが先代の神様だね! おじいちゃんはすごいね!」
「え? うん……あはは……」
……?
おじいちゃんの様子がおかしいね?
「「「ぷっ! あははは!」」」
今度は第三地区の皆も笑っている?
何がそんなにおもしろいの!?
わたしも知りたいよ!




