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ルゥとペルセポネ(3)

「時が来たら……だよ」


 お兄様が優しいけど力強い瞳で見つめてくる。


「時が来たら?」


「うん。きっとまだ『時』が満ちていないんだよ。神様が、まだその時じゃないって言っているんだよ」


「神様……?」


 神様が父親だなんて言えないよね……

 天族の事は内緒にしているから。


「焦ると良くないから……落ち着いて、無理に思い出そうとしない方がいいんじゃないかな?」


「落ち着く……?」


「そうだよ? 焦れば焦る程、自分を追い込んじゃうからね。思い出せる物も思い出せなくなっちゃうよ?」


 そうか。

 その通りだ。

 いつも思い出そうとしていない時にペルセポネの頃の記憶を思い出すよね。

 前の時は、確かベリアルと話していた時だった。

 天界の話をしていた時だっけ?

 家族の話をしていた時?

 うーん。

 第三地区に帰ったらハデスとお父さんに、どうしたら記憶が戻るかを相談してみよう。

 

 少し前からルゥの身体が、もう長くない事は何となく感じている。

 ばあばが永遠に近い時間を生きられるようにしてはくれたけど、人間には耐えられないくらいの攻撃を何度も受けてきた。

 ベリアルに頼んで粘土で身体を創ってもらう事もできたけど……

 わたしがルゥの身体でいたいのは、人間のおばあ様とお兄様に申し訳ないからだった。

 大切な家族の身体を勝手に使ったあげく、違う身体になりたいなんてとても言えなかった。

 でも……きっとおばあ様も分かってくれる。

 おばあ様は、いつもわたしの幸せを願ってくれているから。


 わがままでごめん。

 自分勝手でごめん。

 それでもわたしは……

 どうしてもハデスの隣にいたい。

 もう二度とハデスと離れたくない。

 ペルセポネの魂だから、そう思うんじゃないんだ。


 そう……

 ペルセポネとして産まれて、ハデスに出会って。

 最初は無理矢理冥界に連れ去られて戸惑ったけれど……

 ハデスの不器用な優しさに触れて愛を知ったの。

 

 それから、群馬で月海として育った。

 ハデスのいない異世界で……普通の人間として暮らしてきたんだ。

 そして、今。

 ハデスのいるこの世界でもう一度ハデスに出会えた。


 もう二度と失わない。

 手離さない。

 ずっと一緒にいたいんだ。

 

 もしも、皆が言うようにペルセポネの身体がまだどこかにあるのなら……

 戻りたい!

 ハデスの隣に立ち続ける為に!

 お願い……

 わたしの中にいるペルセポネ……

 どうか、わたしに真実を教えて?

 わたしは、ハデスのいなくなった世界に耐えられずに自殺したの?

 あの、モヤのかかったお母様との記憶の直前に、一体何があったの?

 

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