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ルゥとペルセポネ(2)

「オレはね……妹が……死んでいるって思っていたんだ。海に落ちた赤ちゃんが生きていられるはずがないからね」

 

 お兄様が、悲しい顔でわたしの髪を撫でてくれる。


「でも……悲し過ぎるから。オレだけ生き残って、妹は死んじゃったなんて……辛過ぎるから。だから、母ちゃんが命がけで産んでくれた妹は絶対に生きてるって、オレだけでも信じてあげたかったんだ」


「お兄様……」


「ルゥに初めて会った時、すごく嬉しかったんだよ? 一目見て分かったんだ。妹だって……」


「……うん」


「シャムロックのおばあ様に、ルゥが妹の身体を生かしてくれたって聞いた時……すごくすごーく……感謝したんだ」


「感謝?」


 大切な妹の身体を勝手に使っていたのに?


「うん……生きている妹に会わせてくれてありがとうって……楽しそうに笑う妹の姿を見せてくれてありがとうって」


「……お兄様」


「……妹は死んでいたんだよね? もう……身体は限界なんだね……」


「……ごめんなさい」


 ペルセポネが謝っている……

 ペルセポネの苦しい気持ちが伝わってくる。

 

「もし、叶うならルゥの身体を預かってもらえないかな?」


「え?」


 お兄様?

 どうして?


「聖女の亡骸を奪おうとする輩が現れるかもしれない。魔族は聖女を大切にしているから……預かってもらえれば安心だよ」


「……お兄様」


「任せて。ルゥの身体は魔族が責任を持って預かるよ」


 黙って聞いてくれていたパパが優しく話し始める。


「ルゥのお兄ちゃん……ルゥは赤ん坊の時からすごく甘えん坊で優しくて……いつも自分を後回しにして……だから、これからはハデ……前王との幸せだけを考えて欲しいんだ。その為には……これからルゥは苦しい道を進む事になる」


「苦しい道を……?」


「だから……その道を抜けて違う容姿になって会いに来た時には……優しく抱きしめてもらえないかな?」


 パパ……

 ありがとう……

 パパらしい優しい言葉だね。


「……もちろん。身体が違ってもルゥはルゥだよ。そう思っていいんだよね……? これからも、お兄様って呼んでくれるよね?」


 お兄様……

 そう呼んでもいいの?


「……ごめんなさい。ごめんね。うん……わたしは、ずっとずっと……お兄様の妹だよ」


「うん……ルゥは辛い道を進むんだね。絶対に……違う姿になっても……お兄様はルゥだって気がつくから。だから、必ず会いに来てね?」


「うん……うん……でも……ダメなの」


「ダメ?」


「うん……何も思い出せないの。前の身体の時の事を……」


「……そうなんだね。ルゥが生き残る為には記憶を取り戻す必要があるって事……かな?」


 ベリアルに身体を創ってはもらえるけど……

 ハデスとずっと一緒にいる為には、天界に入れるペルセポネの身体が必要なんだ。


 ……?

 あれ?

 本当にそうなの?

 ベリアルは創り物のヒヨコちゃんの姿で天界に出入りしているんだよね?

 じゃあ、わたしもそうできるんじゃないのかな?

 

 ……あれ?

 頭がぼーっとする……?

 

 ……?

 わたし……今何か大切な事を思いついたような?

 なんだったかな?

 思い出せない……


 最近こんな事がよくあるね。

 まるで誰かの思い通りに動かされているみたいな感覚だよ。

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