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ルゥとペルセポネ(1)

 その日の夜、人間のお兄様に会う為にリコリス王国に向かう。

 クレープを食べてご機嫌のベリアルが喜んで空間移動をしてくれた。

 ハデスは用事があるから、お父さんの力で人間の姿になったパパが付いて来てくれる事になった。


 眩しい光が消えて目を開けると、お兄様の寝室に着いている。


「あ……ルゥ。大丈夫だったの?」


 お兄様はデッドネットルでの事をどこまで見ていたのかな?


「うん……えっと……」


 言葉に詰まるわたしに、お兄様が優しく微笑んでくれる。


「ルゥ、魔王が幸せの島で会った時と様子が違って驚いたよ。何か起こるかと思って、あの部屋の扉を閉めて誰にも見られないようにしておいたからね」


「お兄様……ありがとう」


 本当に助かったよ。


「ルゥの兄ちゃん! お菓子は?」


 ヒヨコちゃんの姿のベリアルが、つぶらな瞳をキラキラさせて尋ねている。


「うん。たくさん用意してあるよ? 海賊の父ちゃんがヒヨコ様の為にって作って持たせてくれたんだ」


「やったぁ!」


 ベリアルがパパに抱っこされながら、おいしそうにお菓子を食べている。


「今日は、前王は来ないの?」


 お兄様が尋ねてくる。


「うん。用事があるみたい」


「そっか……ねぇ、ルゥ? もし……何か辛い事があるなら、リコリスで一緒に暮らさない?」


「え?」


 そういえば、お兄様はわたしとリコリス王国で暮らす為に王様になる勉強を頑張ったんだよね。


「強制とかそういうのじゃなくて……そういう生活もあるっていうか……」


 あの時のお父さんの闇の力を感じて、わたしを心配してくれているんだね。


「ありがとう……でも、わたしは幸せの島が好きなんだ。これからもリコリス王国に遊びに来てもいい?」


「うん。ルゥならそう言うと思ったよ。ルゥが遊びに来てくれる事だけが楽しみだよ」


「わたしが会いに来る事だけが楽しみ? あ……ココちゃんに会わなかったの?」


 お兄様と結婚する為に頑張っているって聞いていないのかな?

 おばあ様の養女になった事も知らないのかも。

 余計な事は言わない方が良さそうだね。


「うん。あの後、すぐに解散になったから。それに姉ちゃん達はデッドネットル城には入れないし」


 やっぱり知らないんだね。


「デッドネットル王は……溺れたけど平気そうだった?」


 わたしがやったんだけどね……


「うん。オレとアルストロメリア王が厳重に注意したからもう二度とあんな口は利かないはずだよ? マグノリア王も聖女をバカにするなんてあり得ないって怒っていたよ?」


「……ありがとう。また助けてもらったね」


「かわいい妹だからね」


「……もしも、わたしが違う身体になったら……お兄様はどう思う?」


 え?

 わたし……何を言っているの?

 ペルセポネが言っているの?


「え? えっと……よく分からないけど……」


 そうだよね。

 こんな話、分からないよね。


「確か、妹の身体にルゥの魂が入り込んだんだよね?」


「……うん」


「元の身体に戻るって事……かな?」


「……うん」


 嫌だよ!

 こんな話をお兄様にしたくないよ!

 ペルセポネ、もうやめて!


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