月海とペルセポネ(4)
今回は、魔王の星治が主役です。
「ヘラ、ダメよ? 男の秘密の書庫なんて……女は入ったらダメよ。ね?」
ヘスティア……
その通りだね。
この中では、陽太君が適任だ。
神は男だけど……一番任せたらダメだからね。
「もし、天使だった時の身体があったら……そっちに戻りてぇか?」
部屋の前まで行くと吉田のおじちゃんの声が聞こえてくる。
「……え? ペルセポネの身体?」
月海の驚く声?
「ペルセポネの身体はもう消えてなくなったから……」
やっぱり月海は思い出していないんだ。
「もし、まだどこかにあったとしたら?」
吉田のおじちゃん……
月海の気持ちを訊き出してくれているんだね。
「……? そんな事、あり得ないよ? だとしたらお父様が群馬であんな事はしなかったはずだよ?」
「……そうか」
「おじいちゃん? 何かあったの?」
「……オレらには分からねぇ。これは……ルーが思い出すしかねぇんだ。ルー……いや、ペルセポネ……」
おじちゃん……
辛い事をさせてごめん。
本当だったら父親のボクがやらなければいけないのに……
吉田のおじちゃんはボクがいない間、こうやって月海の父親をやってくれていたんだね……
「本当に……自殺したんか?」
おじちゃんの泣きそうな震えた声が聞こえてくる。
「……分からない。あの時の事はモヤがかかっていて……」
月海も声が震えている。
「……そうか。ルーは……天界に行きてぇか? 天使の身体がいいか?」
「え? わたしはルゥだよ? ずっと幸せの島にいたいよ? お父様もお母様もヘラもヘスティアも……冥界のケルベロスも会いに来てくれるし。だから天界に行かなくても……でも、どうしてそんな事を?」
「もし……ハデスちゃんが冥界に帰る時がきたら?」
「……? ハデスはずっと幸せの島にいるって言ってくれたよ?」
「ルー……ハデスちゃんは王様なんだぞ? 分かるか? いつかは帰る日がくるかもしれねぇ。それでも、幸せの島でルゥの身体で暮らすんか?」
「……! それは……」
ここから先は、ボクが月海に訊かないと……
ボクは父親なんだから。
「ルゥ……」
ハデスと部屋に入る。
「うぅ……ハデス……いなくなるの? また……いなくなるの?」
月海、やっぱり泣いていたんだね。
「また……? ルゥ……」
ハデスが月海と話し始める。
「嫌……もう嫌なの。すごく辛かった……苦しくて寂しくて……ハデスがいないなんて耐えられない……」
これはペルセポネの感情だね……
「……ルゥ? 本当に……自害したのか?」
ハデスが辛そうな顔で尋ねる。
「覚えていないよ……お父様が時間を戻したから……」
この前の自殺の時の話だと思ったのかな?
「あの時の記憶はわたしにも無い。戻された時間の記憶は絶対に思い出せないからな……では、ペルセポネだった時の事はどうだ? ルゥ……すまない。身体が辛い時に……」
ハデスが優しく月海の髪を撫でている。
「……ごめん。何も思い出せなくて」
月海は何も覚えていないんだね……
どうしたものか……
ブラックドラゴンの本には何か重要な事が書いてあるのかな?
もしペルセポネの身体を悪い男が持っているのなら早く取り戻さないと……




