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月海とペルセポネ(3)

今回は、魔王の星治が主役です。

「ええ。あいつは、この第三地区で酷い事をしてね? もし……ペルセポネがファルズフに殺されていたとしたら? だったらペルセポネの身体は消滅していない事になるわ?」


 デメテルの考えが合っていれば、そうなるけど……


「ファルズフが隠していると……?」

 

 ハデスの声が震えている。


「監禁中の自宅が怪しい……今から行こう!」


 ハデスが冷静さを失っている。

 当然だ。

 冥界では夫婦だったんだ。

 その身体を他の男が持っているなんて、耐えられないよ。


「ん……」


 月海が寝苦しそうに声を出す。


「広場で話しましょう? 今は何も知らせずにゆっくり休んで欲しいわ?」


 デメテルの言う通りだね。

 月海に必要なのは休む事だ。


「オレが月海を見てるから……ハデスちゃんは冷静になれ? 今だけじゃなくて未来も考えねぇと、取り返しのつかねぇ事になるぞ?」


 お母さんが真剣な顔でハデスに話しかける。


「……おばあさん。ルゥを頼みます」


 ハデスは月海の祖母として、お母さんを大切にしてくれているからね。

 少し冷静になったみたいだ。

 こうして、広場でこれからの事を話し合う事になった。

 吉田のおじちゃんとお母さん達が月海を見てくれているから安心だよ……

 でも、これからどうしたらいいんだろう?


「ペルセポネの身体は取り返すべきよ!」

「そうね。今から乗り込みましょう?」


 ヘラとヘスティアが興奮している。


「……待ってくれ。あいつは狡猾な奴だ。もし、乗り込んでルーの昔の身体が無かったら大変な事になる。そこまで計算済みかもしれねぇな……」


 雪あんねぇは、その男に騙されていたのかな?


「そうね。あいつは危険な男よ。ルゥが昔を思い出してくれれば……乗り込むにしても証拠が無いと。もしこれで乗り込んでペルセポネの身体が無ければ、ゼウスもわたしもただでは済まないわ。そうなれば、あいつが監禁から解かれてルゥに何をするか……」


「デメテルちゃんの言う通りだね。わたしがさりげなく探りを入れて……」


「「「やめて!」」」


 神が途中まで話すとデメテルとヘラとヘスティアが声を揃えて黙らせる。


 神はいつも余計な事しかしないらしいからね。

 まあ、田中のおじちゃんだからね……

 想像はつくよ。


「ゼウスは黙って見てて? 今回の事にはルゥとペルセポネの未来がかかっているの!」


 デメテル……

 顔が怖いよ。

 でも神には悪いけどデメテルの言う通りだよ。


「ルゥは本当は全部思い出してるけど、ハデスをペルセポネ様に取られたくなくて黙ってる……なんて事は無いよな?」


 ベリアルが呟く。


 え?

 まさか、そんな事は……


「魔王様……姫様の目覚めた声が聞こえます」


 耳のいい魚族長が教えてくれる。


「とりあえず、月海の所に行こう」


 考えても仕方ない。

 月海に尋ねるべきだけど、ペルセポネの事では月海はかなり傷ついてきたからね。

 何て訊いたらいいのか。 


「シームルグ、お願いがあるんだけど……いいかな?」


 人間の姿のブラックドラゴンが、抱っこしている陽太君に話しかけている。


「ウン。ナニ?」


「天界に行って来て欲しいんだ。わたし専用の秘密の書庫があるんだ。そこに行って本を持って来て欲しいんだ」


「ワカッタ。バショハ、ドコ?」


 そうか。

 陽太君は聖獣シームルグだから天界に行けるのか。

 ブラックドラゴンは天族じゃなくなったからもう天界には入れないんだね。


「それなら、わたしが持って来るわ?」


 ヘラがブラックドラゴンに話しかける。


「え? あ……いや……」


 ブラックドラゴンが困っているね……

 男の秘密の書庫……だからね。

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