月海とペルセポネ(1)
今回は、魔王の星治が主役です。
374話『第二部ルーと愉快な仲間達編マリモは嫌だよ……』の時のお話です。
「陽太を呼んで来ないと! 天ちゃん! 見てるんだろ!? オレらを第三地区に帰らせてくれ! それから、陽太を……」
デッドネットル城に吉田のおじちゃんの声が響く。
どうしよう。
ボクのせいで月海が倒れた……
「星治……星治! しっかりしろ! オレが付いてるからなぁ」
おじちゃん……
いつもはただの変態なのに……
そうだった。
ボクが小さい時も、困っている時にそっと助けてくれていたよね。
眩しい光が消えると第三地区の広場に帰って来ていた。
「天ちゃん! 陽太を連れて来てくれ! 早く!」
吉田のおじちゃんがそう言うと、神が慌てて群馬に向かう。
「ハデスちゃんはルーをお月ちゃんの布団に寝かせてくれ! 星治……落ち着いたか? オレが付いてるからなぁ。もう大丈夫だ」
「おじちゃん……ボクが悪いんだ。大切な月海を……ボクが……」
「誰のせいでもねぇよ? ルーが目が覚めて星治がそんな顔してたら悲しくなっちまうぞ? ルーは陽太が治してくれるから大丈夫だ」
「……おじちゃん、ボク……ごめん。嫉妬なんて恥ずかしいよ」
「気にするな。小さい頃から母一人子一人でやって来たんだ。当然だ」
「……うん」
「ルーの様子を見に行こう。すぐ陽太が来るからなぁ」
「……うん」
お母さんが吉田のおじちゃんを選んだ理由が分かるよ……
すごく頼りになるんだ。
それに、心がすごく温かい。
一緒にいると安心できるんだ。
お母さんの部屋に入ると、月海が苦しそうに横たわっている。
あぁ……
ボクのせいだ。
群馬で苦労していた月海に、この世界で楽しく暮らしてもらおうと思っていたのに。
一番守りたい月海をボク自身が傷つけた……
「ナニ? ドシタノ? イマ、ゴハンヲ……」
少しすると陽太君が群馬から連れて来られる。
「陽太! ルーを治してやってくれ!」
吉田のおじちゃんが、緑の鳥の姿の陽太君を呼ぶ。
「エ? ルーチャン?」
「内臓をやられたみてぇなんだ」
「ナイゾウ? ウン。ワカッタ!」
良かった。
陽太君は月海の怪我を治せるから……
助かったよ。
陽太君が、小さい緑の鳥の姿から美しいシームルグの姿に戻ると内臓の損傷を治してくれる。
「んん……」
月海が苦しそうに唸っている。
まだ苦しいのかな?
古代の闇の力が強過ぎたのかも……
どうしよう……
「ルゥ……ルゥ……? 目を覚ますのだ! 大丈夫か?」
ハデスが月海を起こそうとする。
「嫌だよ……マリモだけは……」
月海?
マリモ?
何の事?
「ルゥ? マリモ……?」
ハデスも首を傾げている。
「ペルセポネの身体が……どこかに……あるから……」
え?
ペルセポネって、月海の魂の?
どこかにあるってどういう事?
「……? ペルセポネの……身体?」
ハデスの顔が険しくなる。
「そうよ? ハデス。……あの男からわたしの身体を取り返して」
そうよ?
月海の口調じゃない。
まさかペルセポネ?
「え? ペルセポネ……なのか?」
ハデスが酷く動揺している。
「んん……マリモは嫌……」
今は月海?
マリモ?
何か怖い夢でも見ているのかな?




