ココとアンジェリカ～後編～

　アンジェリカちゃんとお供の男の子と三人で城門に向かう。

　

「お嬢様、ご無事でなによりです」

「ええ……（はぁ）」

　アンジェリカちゃん……

　面倒そうに、ため息をついてるね。

　この男の子……

　アンジェリカちゃんの事が好きなんだね。

　見ているだけで分かるよ。

　かわいいな。

　あ、また知らない人にぶつかった……

「それにしてもすごい人出だね」

「今日はルゥ様の姿を一目見ようと大勢集まっているようですから」

「ルゥは人気者なんだね」

「はい。聖女様が浄化の旅をしていると知れ渡っていますから、他国からも大勢来ているようですね」

「そうなんだね」

「ココちゃんは、ご家族と？」

「うん。あっという間にはぐれちゃって」

「おかげで、ココちゃんに出会う事ができました。もし、リコリス王国に立ち寄る事があればぜひ遊びに来てください。ご挨拶が遅れました。アルストロメリア公爵家のアンジェリカです」

「え？　公爵家？」

　確か、ヘリオスの婚約者候補が公爵家と侯爵家の年頃の令嬢だったような……

　じゃあ、アンジェリカちゃんはヘリオスの婚約者候補？

　わたしのライバル!?

　……アンジェリカちゃんもヘリオスを好きって事!?

「あの……アンジェリカちゃんは……好きな人とか……いるのかな？」

「え？　あ……はい……（内緒だよ？　命の恩人がいてね。その人の事が好きなの）」

　小声で話しているね。

　お供の男の子に聞かれたくないのかな？

「（命の恩人？）」

　ヘリオスじゃないの？

「（うん。すごくカッコいいの。風の魔術で悪者から助けてくれたの）」

「（それって……リコリス王？）」

「（え？　違うよ？　ルゥ様の側付きの……）」

　アンジェリカちゃんの話の途中で、目が開けていられないくらい周りが眩しく光り始めた。

　これはヒヨコ様が空間移動する時の光？

　待って！

　こんな人混みの中にルゥがいきなり現れたら……

　絶対に大変な事になるよ！

「アンジェリカちゃん！　ルゥが今ここに来るかも！　逃がしてあげないと！」

「え？　今ここに？」

「わたしがルゥを連れてさっきぶつかった辺りの路地裏に走って逃げるから、アンジェリカちゃんはルゥのお供の人達を連れて来てもらえないかな？」

「……ココちゃんが言うなら本当のはず。分かりました。任せてください」

　眩しい光が消えると、やっと目を開けられる。

「これは……!?」

「聖女様!?」

「なんと神々しい！」

　少し離れた場所から、明らかにルゥを見つけて騒いでいる人達の声が聞こえてくる。

「アンジェリカちゃん！　皆を路地裏にお願い！」

　ルゥのいる場所に人混みをかき分けて進む。

「任せて！　ココちゃん、気をつけてください」

　ルゥ！

　産まれた時は助けられなかったけど、今回は絶対に助けるからね！

　待ってて！