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ヘリオスに会う為に

今回はシャムロックの王妹になったココが主役です。

「ココちゃん、よく頑張ったわね。ついにこの日が来たのね」


 お母様が、デッドネットルのタウンハウスでコルセットを締められているわたしに話しかけてくれるけど……

 苦しいって!

 どうしてこんな物が世の中にあるの!?

 無理無理無理!

 息ができないよ!


「ふふ。苦しいでしょう? ルゥちゃんもこの世の終わりみたいな顔をしていたわよ」


 ルゥもコルセットを締め上げられたのか……

 これは地獄だね。

 深く息が吸えないし。

 お貴族様は苦労なんてしていないと思っていたけど、こんな苦しい物を着て過ごしていたなんて。

 実際自分が同じ立場にならないと分からないものだね。


「さて、ルゥちゃんの浄化が終わったらヘリオスにかわいい娘ができたと紹介するわね。まだ話していないから驚くはずよ。ココちゃんの美しい姿に卒倒するかもしれないわね」


「そんな事ないよ。わたしよりヘリオスの方が綺麗だから」


「あら。そんな事ないわ。ほら、鏡を見て」


 身支度を終えた姿を鏡で見ると……


「嘘……これがわたし……?」


 いつものわたしと全然違うよ。

 フワフワに巻かれた髪に、幼く見えるお化粧。

 お姫様が着るみたいなドレスだけど……

 似合っている……よね?


「綺麗よ。よく似合っているわ。ヘリオスの瞳の色のドレス……どうしてわたくしがこのドレスの色を選んだか分かるかしら?」


「……? 分からないよ。どうして?」


「意中の人がいる令嬢は大切な人の髪や瞳の色を身につけるのよ」


「ヘリオスを……好きっていう気持ちがこもったドレス……?」


「ふふ。そうよ。ヘリオスは令嬢達に人気みたいだからココちゃんもしっかりアピールしないとね」


 しっかりアピールか……

 って事はヘリオスを好きなお貴族様は皆ヘリオスの髪の銀と瞳の青のドレスを着ているって事!?

 

「お母様……わたしがシャムロックに来てまだ日が浅いのにドレスってそんなに早く作れる物なの?」


「わたくしのそばにいてくれる人達はとても優秀なの。ココちゃんがヘリオスに会いに行く時の為に、訪ねて来てくれた日から作り始めたのよ」


 そばにいてくれる人達?

 お屋敷にいるおじいちゃんとおばあちゃん達の事かな?


「このドレス……おじいちゃんとおばあちゃん達が作ってくれたの?」


「そうよ。シャムロックにもお店はあるけれど、発注してもこれほどのドレスは簡単には作れないわ」


「すごいね……おばあちゃん達、本当にありがとう」


 身支度を手伝ってくれていたおばあちゃん達にお礼を言うと、嬉しそうに笑ってくれる。


「ココ様が来てから毎日が楽しくて」

「今日はヘリオス様に久々に会うんですよね? 楽しみですね」

「ココ様、令嬢の中には意地の悪い者もいますから気をつけてください」


「うん。ありがとう。きちんとした王妹に見えるように頑張ってくるね!」


 シャムロックの人達は皆優しいな。

 心が温かくなるよ。


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