ベリアルと家族~前編~
吉田のおじいちゃんが、わたしが赤ちゃんだった頃の話をベリアルにしたの?
「ベリアル? おじいちゃんは、どういう話をしていたの?」
「じいちゃんは、ずっとばあちゃんの事が好きだったんだ。でも集落の人間同士は結婚できないから、諦めようって頑張ってたらしいんだ」
「……え?」
吉田のおじいちゃんが、おばあちゃんを好きだった!?
「じいちゃんもばあちゃんも若い頃に結婚相手が亡くなって、お互いに助け合いながら暮らしてきたんだ。ルミが産まれた日に、ルミの母親が亡くなって……しばらくして父親も行方不明になって。ルミの父親の事も本当の息子みたいに大事に育ててたから行方不明になった時は辛くてたまらなかったらしいぞ?」
集落の皆が広場に集まって来る。
いつもは賑やかだけど、今は静かに見守っている。
「ばあちゃんが前の世界で亡くなった時、じいちゃんは辛くて辛くて生きてるのが嫌になったらしいんだ。でも、ばあちゃんを助けられなかったってルミが落ち込んでるのを見て、ルミの為に生きようって決めたって言ってたぞ?」
……覚えているよ。
おばあちゃんが亡くなって自分を責めているわたしに『死ぬ時は一緒に死ぬから、一人で死ぬな』って言って指切りをしようとしてくれた事……
吉田のおじいちゃんは、前世の群馬で『おじいちゃん』でもあり『お父さん』でもあった。
忘れるはずないよ。
「この世界には集落の人間同士で結婚したらいけないって決まりが無いから、じいちゃんはばあちゃんに堂々と好きだって言えるようになったんだ」
前世のわたしの身体を作る為に、おじいちゃんとおばあちゃんは結婚できなかったんだ。
申し訳ないよ……
「今度の人生では何があってもばあちゃんを守ろうって、じいちゃんは決めたんだ。そんな時、ルミがこの世界に来てるって知ったんだ。先に亡くなってたルミがこの世界の第三地区に来ていない事をおかしいと思ってたじいちゃんは、マンドラゴラになるって立候補したらしい」
神様のお父様が、マンドラゴラの姿のおばあちゃん達を幸せの島に来させてくれたんだよね。
吉田のおじいちゃんは立候補してくれたんだ……
わたしの為に……
「オレ、思うんだ。オレは堕天使になってから悪さばかりしてきた。でも、そんなオレの事を赦して家族として迎えてくれたのは第三地区の皆と勇者……ヨータなんだ。それに……ルゥも……」
ベリアル……
確か、天界で行方不明になっても誰も捜してくれなかったって言っていたよね。
何千年も閉じ込められていたのに……
辛くて寂しかったね……
「オレは家族とかよく分かんないけど、ここはすごく居心地がいいんだ。じいちゃんの事は……本当のじいちゃんみたいに思ってる。ばあちゃん達の事も、皆の事も、本当の家族だと思ってる……」
ベリアル……
ヒヨコちゃんの身体が小さく震えているよ……
吉田のおじいちゃんとルゥの指切りの約束のお話は
327話、328話 2023/01/23
第二部ルーと愉快な仲間達編
『ルーとじいちゃんの指切り~前後編~』
で書かれています。




