ベリアルが助ける理由
デッドネットル王国に行く為の身支度をしながら、吉田のおじいちゃんを見張っていた。
案の定、少し離れた場所でベリアルとヒソヒソ内緒話をしている姿が見えた。
しばらくすると、ヒヨコちゃんのベリアルがわたしの所に歩いて来た。
あれ?
珍しいな。
いつもは空を飛んでいるのに。
しかも……
赤ちゃんが歩くみたいにヨチヨチ歩いている!?
かわいいっ!
パタン
え!?
ゆっくりうつ伏せに倒れた!?
転んだにしては、ゆっくりだったよね?
どうしたの?
「ルゥ……お菓子が食べたいよぉ……デッドネットルのアップルパイが食べたいよぉ……」
……!?
ベリアル!?
うつ伏せのまま、小さく震えている!?
「ベリアル? どうしたの?」
いや……
お芝居なのは分かっているけど……
「……デッドネットルのアップルパイが食べたいよぉ」
また言っている。
……吉田のおじいちゃんとの作戦はこれか。
確かにかわいいけど……
ベリアルのかわいさを引き出せていないね。
ベリアルは、かわい過ぎる容姿なのに生意気なところがかわいいんだから。
今日は吉田のおじいちゃんとベリアルは連れて行けないからね。
このくらいじゃ騙されないよ?
「ベリアル……アップルパイはお土産で買ってくるから。今日は留守番していてね?」
全ては吉田のおじいちゃんが捕まらない為なんだよ。
「ええっ!? これじゃダメなのか!? じいちゃん! 作戦を変えるぞ!」
「おう! 第二作戦に変更だ!」
ベリアルも吉田のおじいちゃんも、大声で作戦とか言っちゃっているし……
行く気満々だね。
黙って勝手に付いて来る事もできるのに、ちゃんと許可を得ようとするところがかわいいよね……
なんて言ったらおじいちゃんが調子に乗っちゃうかな?
「ルゥ! アップルパイをくれないとイタズラしちゃうぞ!」
ベリアル?
ハロウィンみたいだね。
「ベリアル……何回も言っているけど、吉田のおじいちゃんが裸踊りを始めたら捕まっちゃうの。危ないんだよ?」
「……だって、じいちゃんが……」
途中まで話すとベリアルが黙った?
「ベリアル……?」
何か、わたしが知らない事があるのかな?
「じいちゃん……ごめん。オレ、話すよ。じいちゃんの気持ちをルゥにも分かってもらおう?」
「ベリアル? 吉田のおじいちゃんの気持ちって?」
「じいちゃんが教えてくれたんだ。ルゥが前の世界で赤ん坊だった時の事……」
「わたしが赤ちゃんの時?」
「それを聞いたら……じいちゃんを助けてやりたくなったんだ。もちろんお菓子を食べたいのもあるけど……」
……?
どんな話を聞いたんだろう?




