自分で決めた未来だから~前編~
「もう三十分経っただろ!? 今すぐ行くぞ!? 誰が行くんだ!? オレとルゥとハデスだけか!? じいちゃんは行くか?」
ベリアルが、リコリス王国のお菓子を食べたくて慌てている。
吉田のおじいちゃんに完全に餌付けされているよ。
チョコ入りマシュマロか……
わたしも餌付けできたりして。
ルゥ大ちゅきって言ってもらえるかな?
「お月ちゃんと温泉デートなんだ。また明日頼む」
吉田のおじいちゃん……
もう明日の浄化に付いてくるのを隠すつもりもないんだね。
明日も波乱の予感……
「よし! 他に行きたい奴はいないか? じゃあ出発だ!」
目が開けられないくらいの光が消えると、お兄様の寝室にいる。
空間移動は何度経験してもすごい。
脳がついていけなくてフワフワする。
「あれ? 誰もいないね? 早過ぎたかな?」
「ええっ!? お菓子は!?」
「ベリアル……もう少し小さい声にしないと……一応忍び込んでいる感じだし……」
「待て! 甘い匂い……本棚の裏からだ!」
ベリアル……
すごい嗅覚だ……
「さすがはヒヨコ様!」
本棚が動いて奥から海賊の魚人族二人と人間の男性一人が出てくる。
そういえば、ベリアルは空間移動ができると分かってから『ヒヨコ様』って呼ばれるようになったんだよね。
こんなに小さくてかわいいのにヒヨコ様……か。
かわい過ぎるよっ!
「海賊の兄ちゃん達! お菓子は?」
かわいいヒヨコちゃんがつぶらな瞳を輝かせながら尋ねている……
堪らないね。
「あは……あははは……」
ニヤニヤ笑っちゃうよ……
「聖女様は本当にヘリオスにそっくりだな……」
魚人族の一人が呟いたけど……
「……お兄様は立派な王様なのに、わたしみたいに変態なの?」
「聖女様の事になると、そりゃあもう……鼻血を垂らして興奮してたよな?」
「そうだそうだ。ニヤニヤ笑ってたな」
「聖女様……もし大変じゃなかったらヘリオスにちょくちょく会いに来てやってもらえねぇかな? あいつも喜ぶだろうから……」
海賊の皆が楽しそうに話し始めた。
でも……
ばあばに永遠に近い命を授けてもらってから、ずっと考えている事があるんだ……
「うん……そうしたいとは思っているの……でもね? わたしとお兄様とは……生きる長さが変わっちゃったの……仲良くなり過ぎたら……」
「聖女様……? それはどういう?」
魚人族が尋ねてくる。
「……お兄様がおじいちゃんになっても、わたしは今のままで年をとらなくて……お兄様が……亡くなったら……辛過ぎて耐えられないよ……人間の家族の皆が亡くなった後も、わたしだけが生きているの……」
身体が小さく震え始める……
お兄様がいなくなるなんて考えただけで苦しくなるよ。




