変態公認の、ど変態
夜になる前に、冥界のケルベロスと天界の家族が帰っていった。
「さて、夕飯も終わったし月海は兄ちゃんの所に行くんだろ?」
食後のお茶を飲みながら、おばあちゃんが話しかけてくる。
第三地区の夕食は、皆早く寝るから少し早い時間なんだよね。
おかげで最近は早寝早起きで健康的な生活をしている。
お肌の調子もすごくいいんだ。
「うん。遊びにおいでって言われたの」
「え? リコリスに行くのか!? オレも行く!」
ヒヨコちゃんのベリアルが、つぶらな瞳を輝かせる。
「あそこには見た事がないお菓子がいっぱいあるんだ! また遊びに来る時には、旨いお菓子を用意しておくって言われたんだ! 今すぐ行くぞ!」
「ベリアル……今すぐだと早過ぎるんだよ。お兄様達は船と馬車で移動しているから、まだリコリス王国には着いていないはずだよ?」
「人間は不便だな……じゃあ、お菓子の準備もしてないって事か!?」
「分からないけど……海賊の家族がこっそり持って来てくれているんじゃないかな?」
「海賊のお菓子!? やったあ! あれ、旨いんだよな! あとどれくらいしたら行くんだ!?」
「まだ、あと三十分は待とうね?」
「うぅ……お菓子……」
おあずけされているヒヨコちゃんもかわいい……
「リコリスに行くなら夕飯を控えめにすればよかった……ばあちゃんのご飯は旨いからおかわりしちゃったよ……」
後悔しているヒヨコちゃんもかわいい……
「ばあちゃん、お腹を空かせる方法はないかな?」
質問しているヒヨコちゃんもかわいい……
「そうだなぁ……動けば腹が減るかもなぁ」
「動くのか……じゃあ、島を飛んでくる!」
空を飛ぶヒヨコちゃんもかわいい……
「あは……あははは……」
笑いが止まらないよ……
「うわっ……ルゥまた笑ってる。気持ち悪っ……」
軽蔑するヒヨコちゃんもかわいい……
振り向いてわたしを軽蔑の瞳で一瞥して飛んでいくのもかわいい……
「ルー……変態街道まっしぐらだなぁ。あははは」
吉田のおじいちゃんだけには言われたくないよ……
「だってかわいいんだもん……あのフワッフワの羽毛につぶらな瞳……ヒヨコちゃんなのに飛ぶところとか! あと、ちょっと生意気なところが最高なんだっ!」
「お……おう。そうか……」
え?
吉田のおじいちゃんが、わたしの変態にひいている!?
もしかして、わたしの方がおじいちゃんよりも変態なの!?
そんな……
「おじいちゃん……わたしって……変態……かな?」
「変態っていうよりは……」
変態っていうよりは?
「ど変態だなぁ! あははは。今さら真人間になんか戻れねぇぞ!」
真人間には戻れない!?
……わたしって、真人間じゃなかったの?
もう戻れない……
わたしは……
変態公認の、ど変態だったのか……




