通じ合う気持ち
おばあちゃんに手伝ってもらっていつもの服に着替えて広場に向かう。
あれ?
ケルベロス王が二人いる……?
一人は冥界のケルベロスか……
ケルベロス王の方が少し小さいんだね。
「それでは、この世界のケルベロス族の先祖は元々冥界にいたのですか?」
「そうだ。追放された者達の子孫がこの世界のケルベロス族なのだ」
「帰ったら国の者達に知らせなければ」
「そうするがいい」
「ずいぶん身体が小さいな」
「この世界のケルベロス族の中では一番大きいのですが……何を食べたらそれほど大きくなれるのですか?」
「それはな……」
あぁ……
かわいい……
六つの頭が話している。
「あ、聖女様。それではわたしはこれにて失礼します」
「ええ? ケルベロス王、帰っちゃうの?」
「はい。魔王城に従者を待たせてありますので……明日からはわたしは付いて行けません。どうか気をつけください」
「……うん。ケルベロス王……わたしにそれを言う為に待っていてくれたの? いつも気にかけてくれてありがとう」
「聖女様……わたしはいつでも聖女様の幸せを願っています。では……」
ケルベロス王……
優しいな……
魔王城に向かう後ろ姿もかわいい……
「ペルセポネ様……人間の国はいかがでしたか? 夜に来る約束が……楽しみ過ぎてかなり早く来てしまいました」
楽しみ過ぎて早く来た!?
冥界のケルベロスが嬉しそうに話しかけてくる。
「かわいい……かわい過ぎるよ!」
冥界のケルベロスに抱きつくと……
うわあぁ!
フワフワ……
「あは……あははは……今日も最高の抱き心地……堪らないね……」
興奮が止まらないよっ!
「わたしも最高に嬉しいです!」
「ペルセポネ様、赤ん坊を望まれているとか……今から楽しみです!」
「産まれてきたらお世話させてくれ!」
ケルベロスの三つの頭が話している。
ちゃんと声が重ならないように話す姿が、かわい過ぎるよ!
「ケルベロスはお菓子は好き? いっぱいもらってきたの。一緒に食べよう?」
「はい。わたしは甘い物に目がなくて」
「これは……見た事のないお菓子です」
「あぁ……おいしい……」
ケルベロス王もお菓子好きだから、冥界のケルベロスもお菓子が好きなのかなって思っていたんだ。
「お前もお菓子が好きなのか? 気が合いそうだな! 吉田のじいちゃん! 約束のマシュマロくれよ! オレ頑張ったぞ?」
「ん? そうだったそうだった……ほら、中にチョコが入ったマシュマロだ(明日も頼むぞ? )」
え?
今の会話って……
やっぱり、おかしいと思ったんだよ。
ちょうどいいタイミングで、ベリアルがアルストロメリアに現れたし。
浄化の旅に行きたかった吉田のおじいちゃんの作戦だったんだ。
それにしても、ベリアルは簡単に餌付けされちゃうんだね。
堕天使だったのに報酬はマシュマロでいいのか……
……かわい過ぎるよ。
「任せとけ! 明日も上手い事やってやるよ。ほら、お前にもやるよ! マシュマロって知ってるか? 甘くて柔らかくて旨いんだ!」
「ありがとうございます。ではさっそく……」
「うまあああい!」
「なんだこの食感は!? 幸せを具現化したかのようだ!」
……!?
ベリアルが……
あの、お菓子の事になると見境がなくなるベリアルが……!?
冥界のケルベロスにお菓子を分け与えている!?
そういえば、ハデスの天界にいる時の側付きがベリアルで、冥界の時の側付きがケルベロスだったよね。
お互いの苦労を分かり合っているから……か。
……通じ合うものがあるんだね。
マシュマロは甘くて柔らかくて旨い……?
ベリアルも……
吸うと、甘くて柔らかくて旨いんだよ……
「あは……あははは」
ダメだ……
想像しただけで笑いが止まらない。
「うわあぁ……ルゥ、また薄気味悪い笑いを……」
ベリアルが軽蔑の眼差しでわたしを見ている。
「え? ペルセポネ様はいつもあんな感じでしたが……?」
ケルベロス!?
そうだったの?
わたしのモフモフ好きの変態はペルセポネの頃からだったの!?




