赤ちゃんが産まれたら~後編~
「ひいおばあちゃん? どうして知っているの?」
赤ちゃんが欲しいっていう事は、まだ誰にも話していないけど……
「ん? 浄化してるところを水晶で見てる時に、天ちゃんが教えてくれたんだ。もうすぐ、かわいい孫ができるってなぁ」
「お前、あの時……また水晶で盗み見ていたのだな」
ハデスがお父様に怒っている。
ん?
また?
っていう事は何度も勝手に見ていたの?
それはさすがに気持ち悪いね……
「だって、だって! 具合が悪そうなルゥが心配だったんだもん! そしたら、孫の話が聞こえてきたから嬉しくて……つい……ごめん……」
「次に勝手に覗いたら……分かるな?」
「はいっ! 二度と勝手に見ないから! ごめんね? それで……孫が産まれたらなんだけど……」
「今度は何だ?」
「赤ん坊の名前をね? 考えたいなぁって思って!」
「……本物のバカだな」
「え? 一応、神なんだけど!?」
「お前みたいな浮気ばかりする女好きは、絶対に名付け親にはさせない」
「ええっ!? 今はもう浮気なんてしないよ!? (ヘラちゃんが怖いからっ!)」
「……子の名付け親には、魔王様と第三地区の方々になってもらおうと考えているのだ。子は天界にも冥界にも入る事ができないからな。この第三地区で長い時を過ごす事になるだろう。わたしもルゥもほぼ第三地区にいるし、子育ての仕方を教えてもらえたら安心だからな。人間らしい名をつけて欲しい……魔王様、地区の方々、お願いできますか?」
「いいのかな? ハデスと月海で決めた方がいいんじゃないかな?」
お父さんが困っているね。
でも……
「……わたしも、人間らしい名前をつけて欲しいな。産まれてくる子は天使にもなりきれないし、人間にもなりきれない。でもね? 人間としてこの第三地区と幸せの島で楽しく暮らして欲しいんだ。わたしみたいに。わたし……すごく幸せだから」
「月海……そうだね。月海はいつも楽しそうだ……分かったよ。集落の皆も一緒に考えてくれるかな?」
「もちろんだ! そうかそうか。赤ちゃんだったルーがママになるんか! あははは」
「かわいい名前をつけようなぁ。あははは」
「いっぱい名前を考えておいて、産まれて顔を見たらその中から決めるか?」
「落語みてぇに皆が出した名前をくっつけるのはどうだ? 長い名前になるけどなぁ! あははは」
「そりゃいいなぁ! あははは」
……第三地区の皆は楽しそうだね。
そうか。
創り物の身体だから赤ちゃんは産めないんだよね……
前世のわたしの身体を作り出す為に脱け殻になった天使の身体を使われて群馬で産まれて、今はこの世界で創り物の身体で暮らしているんだ……
わたしの事を恨んでもいいはずなのに、いつも優しくしてくれる。
申し訳なくて胸が苦しくなるけど……
そんな風に思っているって言ったら悲しませちゃうよね。
赤ちゃんが産まれたら、きっとすごく幸せに育つんだろうな。
この第三地区と幸せの島で……




