アルストロメリア王国の浄化終了!
ハデスに抱き上げられてドラゴンの姿のばあばの背中に乗る。
おあいちゃんとおばあちゃんと雪あん姉と前ウェアウルフ王のお兄ちゃんが、ブラックドラゴンの背中に乗っている。
「聖女様、わたしはジャバウォックが空に控えていますのでこれにて失礼します」
イフリート王が左手を上げるとジャバウォックが飛んでくる。
うわあぁ!
カッコいい!
王子のジャバウォックはかわいいけど、イフリート王のジャバウォックは凛々しくてカッコいいんだね。
……今度撫でさせてもらってもいいかな?
「ヴォジャノーイ王も一緒に乗ろうよ!」
ばあばの背中から手を差し出すと、ヴォジャノーイ王が嬉しそうに手を握ってくれる。
「なんだ……お前も乗るのか」
ハデス!?
ヴォジャノーイ王は甥っ子だよね!?
顔が怖いよ!?
「お……伯父上……ごめんなさい……」
ヴォジャノーイ王……
かわいそうになっちゃうよ……
でも……
ハデスの顔が少しだけ嬉しそうに見える。
本当は甘やかしたいけど『王様として立派になって欲しいから厳しくしないといけない』って我慢しているんだよね。
赤ちゃんの頃からかわいくて仕方がない大切な甥っ子なんだ。
「伯母上……わたしはブラックドラゴンに……」
「大丈夫だよ? (本当はハデス、一緒にいられて嬉しいんだよ?)」
こっそり教えてあげないと……
誤解したままだと、ハデスもヴォジャノーイ王もかわいそうだよ。
「(え? そうは見えないのですが……)」
「(よく見て? 口角が少し上がっているでしょ? あれはかなり嬉しい時なんだよ?)」
「(……確かに、口角が……)」
「何をコソコソ話している? 聞こえているぞ?」
ハデスが恥ずかしさを隠しながら怒っている。
かわいいかも……
ドラゴンの姿のばあばとおじいちゃんがゆっくり空に浮かび上がる。
アルストロメリアの人間達が静かに見上げている。
ドラゴンなんて、なかなか見る事がないからね。
まあ、普通は見た後にすぐ食べられちゃうだろうし……
あ……
お兄様と目が合った。
口を動かしている?
何だろう?
「伯母上、リコリス王が遊びにおいでと言っています」
ヴォジャノーイ王は耳がいいから聞こえていたんだね。
微笑みながら頷くとお兄様も頷いてくれる。
「ばあば、ごめんね……少しこのまま待ってくれる?」
二十メートルくらい上空で止まってもらう。
「ルゥ? 何か忘れ物?」
人間からかなり離れたから、ばあばが話し始めたね。
「ううん。光の花火を上げたいと思って……」
「いいわよ。光の花火……楽しみね」
ばあばが優しく笑ってくれる。
ばあばの背中に乗ったまま集中する。
アルストロメリアの人間達が幸せに暮らせますように。
たぶん、今日の為に色々準備をしてくれていたはず。
そのお詫びに……
空高く大きい光の花火が何発も打ち上がる。
「うわあぁ!」
人間達の大歓声が聞こえてくる。
よかった。
喜んでもらえたみたい。
「綺麗ね……」
ばあばも嬉しそうに花火を見ている。
「じゃあ、帰りましょうか?」
花火が終わると、ばあばが幸せの島に向かって飛び始めた。
「あ、ばあば。ヴォジャノーイ王国に行けるかな?」
遊びに行く約束をしていたんだよね。
「ヴォジャノーイ王国ね。任せて。久しぶりだわ。楽しみね」
ばあばが嬉しそうに笑っている。
「飲み過ぎるなよ?」
ハデスが呆れている?
「ハデス? 飲み過ぎるって……?」
何かおいしい飲み物があるの?
わたしも飲みたい!
「酒だ……ヴォジャノーイ王国では上質な酒が作られている。一晩でその酒を全て飲み干された事があったのだ……」
え?
そんな事があったの?
ばあばはお酒が大好きなんだね。
知らなかった。
「その後、意識を失うほど酔ってな……ドラゴンの姿で城内で暴れて大変だった……」
ばあばは酒乱なのかな。
確かに飲み過ぎない方がよさそうだね。
「あら? そんな事あったかしら? うふふ」
……嫌な予感がしてきたよ。
これはまた何かありそうだね。




