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ルーとじいちゃんの指切り~前編~

「とりあえず大丈夫そうだから、このまま王様に会いに行こうか……」


 一刻も早く挨拶を済ませて吉田のおじいちゃんを家に帰らせないと。

 嫌な予感しかしないよ。

 裸踊りを始める前に……

 急ごう!

 とは思うんだけどね……

 町に繋がる道をゆっくり歩き始める。

 急いで歩いて家にぶつかって壊しでもしたら大変だからね……

 なるべく騒ぎは起こしたくないし。


「吉田のおじいちゃん……ケルベロス王にずっと乗っているの? 歩けなさそう? 疲れちゃった?」


 目立つから歩いて欲しいけど……

 すごくご機嫌で乗っているね。

 鼻歌まで歌っているよ。


「昔なぁ……こうやって狼の背中に乗るマンガがあったんだ。思い出してなぁ……」


「そうなんだね……で、歩けそう?」


「懐かしいなぁ……」


「そうなんだね……で、歩けそう?」


「……楽だから乗ってたい」


「……だろうね。そうだろうとは思っていたよ……」


「「……」」


 吉田のおじいちゃんらしいね。

 でも……

 前の世界の学校の父親参観は、田中のおじいちゃんだったお父様と、吉田のおじいちゃんが必ず来てくれていたんだよね。

 賑やかで先生に怒られていたけど……


「先生は、恋人はいるんですか?」

「おじいさん……(今年もいる……)」

「覚えててくれたの? いやぁ、モテる男は辛いなぁ。あははは!」

「今のはオレに言ったんだ! 天ちゃんに言ったんじゃねぇぞ?」

「おじいさん達……今年も追い出されたいですか?」

「ああーん! 先生! もっと、なじってえぇ?」

「出てけーっ!」


 懐かしいな……

 毎年静かにできなくて追い出されていたよね。

 父親のいないわたしが寂しくないようにしてくれていたのかな?

 綺麗な先生に会いに来ていたんじゃないよね……?

 参観が終わったら三人で歩いて集落まで帰ったっけ。


「吉田のおじいちゃん……覚えているかな? 父親参観が終わると、こうやって歩いて集落まで帰ったよね」


「ん? あぁ……そうだったなぁ。ルーは……覚えてるか?」


「……? 何を?」


「じいちゃんとの指切りだ……」


「指切り……?」


「お月ちゃんが亡くなって、ルーがひとりぼっちになった時……忘れたか?」


「……忘れてないよ?」


「そうか……」


「じいちゃんな? ルーが溺れ死んだ時……本当に……辛かった……」


「……うん」


「ルー? 今……幸せか?」


「……うん」


「そうか。……そうか」


「おじいちゃんは? 幸せ?」


「ああ……幸せだ。毎日笑って暮らしてるからなぁ」


「そうだね……第三地区は、いつも賑やかだよね」


「ルー? じいちゃんはなぁ……」


「ん? 何?」


「あの時、お月ちゃんとルーを守れなかった。だから……今度は二人を守りてぇんだ」


「おじいちゃん……」


 普段とは違ってすごく真剣な顔だ……

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