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浄化の旅に出発だ!

「月海……お父さんが付いて行ければいいんだけど……さすがに魔王が人間の前に現れるわけにはいかないから……気をつけるんだよ?」


「うん。頑張ってくるね!」


 今朝は早起きして、床屋のあんねぇに綺麗に見えるように身支度をしてもらったんだ。

 ハデスが準備してくれた聖女っぽく見える白いドレスを着たけど……

 少し緊張してきた……


 雪あん姉は袴姿が凛々しくてすごく素敵。

 わたしが心配で付いて来てくれる事になったおばあちゃんは、お父さんが準備してくれた綺麗なワンピースを着ている。


「お雪さんと一緒にお出かけできるなんて幸せです」

「狼の兄ちゃん、遊びに行くんじゃねぇんだぞ? ふふっ」


 雪あん姉と、前ウェアウルフ王のお兄ちゃんが楽しそうにしている……

 二人はすごく仲良しだね。


「お月ちゃん、気をつけるんだぞ?……星治、オレも行きた……」

「ダメだよ? 吉田のおじちゃんは、すぐ裸になるから。捕まっちゃうからね?」


 お父さん……

 食いぎみで阻止したね……


「聖女様、そろそろ出発しましょう」


 イフリート王が話しかけてくる。


 今回の浄化の旅には、魔族の種族王も交代で来てくれる事になっている。

 今日はイフリート王とケルベロス王とヴォジャノーイ王か。


「伯母上、お美しい……美し過ぎます! あとでヴォジャノーイ王国で肖像画を描きたいのですが……伯父上、いかがですか?」


 ヴォジャノーイ王……

 ハデスの地獄の鍛錬を乗り越えた後輩のわたしを、すごく大切にしてくれるんだよね。


「そうだな。さっさと浄化を終わらせて久々に遊びに行くか。ルゥの新しい服を作りに行こうと思っていたところだからな」


「はい! 伯父上! あぁ……楽しみだなぁ」


 ヴォジャノーイ王……

 ご機嫌だね……


「皆、すまないね。こんな事を頼んでしまって」


「魔王、聖女様は我ら魔族にとって大切なお方です。お守りするのは当然の事です」


 イフリート王がお父さんと話しているね。

 よし、今がチャンス!


「(あのね? 今度お父さんの誕生の宴をする予定なの。ケルベロス王とヴォジャノーイ王も参加してくれるかな?)」


「(聖女様……聖女様の頼みでしたら喜んで)」


 ケルベロス王が小声で話してくれている。

 かわい過ぎるよ……


「(もちろんです! 魔王様の誕生の宴に参加できて幸せです)」


 ヴォジャノーイ王はお父さんが大好きだからね。

 あとでイフリート王にも話さないと。

 神様のお父様に、前の世界の日にちを尋ねたら一週間後がお父さんの誕生日だったんだよね。

 お父さんの誕生日を祝えるなんて嬉しいな。

 前世では一度もできなかったから……


「ハデス? どうやって人間の国に行くの? 水の中を進むの?」


「あぁ……あのバカにやらせるから大丈夫だ」


「あのバカ……?」


 ハデスがバカって呼ぶのは一人だけだね。

 お父様……だよね?


「うわあぁん! ハデス! ごめんってば!」


 お父様が泣きながら謝っている。


「うるさい……黙れ……」


 ハデス……

 お父様は一応神様だよ?

 扱いが雑だね……

 今回もやっちゃったから仕方ないけど……


「これが神とは……」


 イフリート王……

 本当にその通りだよ。

 しかもその情けない神様はわたしのお父様なんだよ……


「神は想像とずいぶん違うな……ダメダメじゃないか……」


 ケルベロス王も呆れちゃっているね。


「伯母上のお父上ならば、立派に違いありません! (たぶん……きっと……)」


 ヴォジャノーイ王……

 そうでもないんだよ……

 ん?

 小声で何か言ったかな?


「ううぅ……ヴォジャノーイ王は優しいね……大好きっ!」


 お父様……

 もう話さない方がいいよ……

 立派だと思われたいならね……


「ルゥ、気をつけるのよ? お母様達はこの水晶で見守っているから……どうにもならなければ助けに行くわ……」


 お母様がすごく心配そうにしている。


「うん。ありがとう。お母様。ヘスティアもヘラも来てくれてありがとう」


「かわいい姪の為だもの」

「気をつけてね?」


「うん! いってきます!」


「じゃあ、やるよ? 目を閉じて! 空間移動は眩しいからね!」


 お父様が空間移動を始める。


 さぁ、浄化に出発だ!

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