幸せな一日
「冥界のケルベロス……なんだよな……すごく怖いって聞いてたけど想像と違うな……」
ベリアル?
どうしたのかな?
「ベリアルはハデスの側付きだったんだよね? 会った事はなかったの?」
「ああ。オレは天界にいた時の側付きだからな。冥界には行った事がないんだ」
そうだったんだね。
このかわいいケルベロスが怖い?
噂って信用できないね。
「そうだ! ケルベロスは温泉って知ってる? すごく疲れが取れるんだよ?」
「疲れが取れる? それは素敵ですね」
「今から皆で入ろうよ!」
「そうしたいところですが……冥界での仕事が山積みでして……残念です」
「そうなんだね……残念だけど、また明日も遊びに来てくれる?」
「「「はい! もちろんです!」」」
「明日はね? 朝からお出かけなの。夜に来てもらってもいいかな?」
「「「はい! もちろんです!」」」
あぁ……
かわいい。
なんて素直なの。
しかも最上級の触り心地!
冥界のケルベロス……
最高だよっ!
「「「では、失礼します!」」」
しゃがみ込むと空高く飛び跳ねる。
すごい!
ジャンプしただけなのに見えなくなった!
天界って空にあるのかな?
空の上に宮殿とかがあるの?
落ちてこないのかな?
「また明日、待ってるね! わたしのモフモフパラダイスー!」
あぁ……
幸せだった。
明日の浄化も頑張れそうだよ。
「お前……モフモフパラダイスってなんだよ……」
ベリアルが呆れた顔で見つめてくる。
「だって、すごいの! フワッフワで甘い匂いで堪らないよ!」
鼻息が荒くなっちゃうよ!
この感動をどう伝えればいいの!?
「……お前は、オレじゃなくてもいいんだな……」
え?
ベリアル?
もしかして……
嫉妬……?
冥界のケルベロスに嫉妬しているの!?
かわいいっ!
「あは……あはは……堪らないね……今日は最高の一日だよ……」
ニヤニヤが止まらないよっ!
「もうっ! かわいいちゃんっ!」
ヒヨコちゃんのベリアルを抱きしめる。
「あはは……あははは! 幸せっ!」
「離せ! こら! 変態め!」
「そうだよ! わたしは変態だよ!? もう掴まえちゃったんだから吸われるんだよっ! あはは!」
「……お前、どうしたんだ? いつもより変だぞ!?」
「えええ? いつもろおりらおぉ?」
あれ?
目が回る?
「ルゥ!」
ハデス?
どうしたの?
あれ?
目の前が……真っ暗……
「ん……?」
ここは……?
「目が覚めたか?」
「ハデス……?」
「ケルベロスの甘い香りにはアルコールが含まれていたようだな」
「アルコール?」
「もう少し、こうしていよう」
「え?」
あれ?
わたしとハデスの家のベット?
運んでくれたんだね……
「ずっと抱きしめていてくれたの?」
「あぁ……」
「ふふっ……幸せ……」
「ルゥ……?」
「うん? 何?」
「浄化の旅から帰ったら……」
「ん? うん……?」
「赤ん坊を……欲しいと……思うのだが……」
「……!? 赤ちゃんっ!? やったぁ!」
「ルゥ……今までも、これからもずっと……愛しているよ……」
「……うん」
本当に今日は幸せな一日だね……
ハデス、これからもずっとずっと……
大好きだよ……




