浄化の旅とおばあちゃん
「皆、聞いて欲しい! 明日からの三日間、月海は残りの三か国を浄化する事になった。この三日間が済んだら皆の旅行が再開するからね? 順番にリコリス王国に遊びに行こう」
魔王であるお父さんが第三地区の皆に説明を始める。
「この三日間は一瞬たりとも気を抜けない。月海……できるかな?」
うっ……
今の変態の姿を見て不安にさせちゃったね……
「大丈夫だよ? わたしは、やればできる子だから!」
鼻にティッシュを詰め込んでいる時点でダメダメだけど……
ちゃんとできるよ!
「月海……そうだね」
あぁ……
お父さんが鼻に詰まっているティッシュを見つめている……
完全に不安そうだ……
「魔王様、心配いりません。ルゥは全魔族王会議でも臆する事なく立派に対応していました。安心してお待ちください」
「ハデス……月海を頼んだよ? それから……申し訳ないんだけど前ハーピー族長と雪あん姉に一緒に行って欲しいんだ。女性しか入れないと言われて月海を一人にしたくないんだよ。二人は強いから……お願いしてもいいかな?」
「ああ、もちろんだ! ルーは、まだまだ赤ちゃんだからな。オレが守ってやる!」
雪あん姉がカッコ良く笑っている。
あぁ……
今日も素敵だな……
こんな風になりたいよ。
「魔王様、姫様の事はお任せください」
族長も来てくれるんだね。
心強いよ。
「姫様、わたしの事はハーピー族長ではなく『おあい』とお呼びください」
確かにそうだね。
今の容姿は綺麗な人間だから。
「うん。そうさせてもらうね? よろしくね。おあいさん」
「さんは……いらないのですが」
「え? でも……じゃあわたしの事もルゥって呼んで?」
「それはできません! 魔王様のお嬢様ですから!」
「うーん……分かった。じゃあ、おあいちゃん……って呼んでもいい?」
「……はい。それならば……姫様、絶対にわたしと雪さんから離れないでください。人間は欲深く己の利益しか考えない生き物です」
「分かった。気をつけるね?」
「星治、オレも行く」
おばあちゃんがお父さんに話しかけた?
「お母さん……ダメだよ? 何かあった時に自分の身を守れるくらい強くないと……」
「強ければ行ってもいいんか?」
「お母さんには無理だよ……いきなり人間が攻撃してくるかもしれないんだよ?」
「星治……見ろ! オレの氷の力を!」
おばあちゃんが手のひらを空に向けると雪が降り始めた!?
「……!? これは!? 雪? お母さんがやってるの!?」
「え? おばあちゃん!? どうなっているの!?」
「星治、月海、まだまだこんなもんじゃねぇぞ?」
おばあちゃんが氷で猟銃を創った!?
「ルー! 助けてぇ!」
神様のお父様が幸せの島に繋がる橋から走って来ている?
また浮気をしたのがバレたのかな?
今度こそヘラに殺られるね……
「いいところに来たなぁ……」
おばあちゃん?
え……
まさか……
氷の猟銃から氷の弾がすごいスピードで飛んで行く。
って……
ええっ!?
おばあちゃん!?
お父様を狙ったの!?
一応神様だよ!?
「うわあぁ! なんか飛んできたぁぁあっ!」
すごい……
ギリギリで避けた……
さすが、天界三姉妹に毎日やられているだけの事はあるね。
反射神経が研ぎ澄まされているよ!
「ほれ、どうだ! これなら一緒に行けるだろ?」
おばあちゃん……
満足そうだけど……
これは一体どうなっているの!?
……お父様、今度は何をやらかしたの?
氷の弾を避けて座り込んでいる背後に、殺気立ったヘラが立っているよ?




