第三地区は今日も笑いに包まれる……
「ルゥ……気にする事ないわよ? ヒヨコ相手にヨダレを垂らしたあげく鼻血まで垂らしたって、かわいい娘に変わりないわ?」
「そうよ? これ以上ないほど、ニヤけた顔をしながら鼻血を垂らしたからって落ち込む事はないわ? どんなに、ど変態でもかわいい姪よ?」
お母様と伯母のヘスティアが励ましてくれているつもりで、とどめを刺してくる。
うう……
まだ鼻血が止まらないよ……
情けない……
「月海、ちり紙を丸めて鼻に詰めとけ! ぷふっ」
「そうだぞ? みーんな、そうしてるんだ! ククッ」
「ホレ、吉田のじいちゃんが作ってやったからなぁ? 鼻に詰めろ! ぷはっ!」
おばあちゃんも野田のおじいちゃんも吉田のおじいちゃんも……
絶対面白がっているよ……
かろうじて笑いをこらえているけど、吹き出しちゃっているよ?
恥ずかしい……
早く止まってよ!
わたしの鼻血!!
「ルゥ……大丈夫か……?」
ハデス……
こんな変態が妻だなんて……
嫌になっちゃったかな?
「ごめんね……わたし、こんなに変態で……嫌いになった……?」
「そんな事はない。ルゥの全てが愛おしいぞ?」
ハデス!?
うう……
ドキドキしちゃうよ!
あぁ……
止まりかけていた鼻血が、また大量に!
「ほら、月海恥ずかしがってないで鼻にちり紙を詰めろ!」
「え? 待って、おばあちゃん! それだけは恥ずかしいからやめて!? ああ!」
鼻血が出た右の鼻にティッシュを詰め込まれた!?
うわあぁ!
ハデスに見られちゃった!
一番大好きなハデスに!
もう、嫌だあああっ!
「ルゥ……どんな姿でも美しいぞ……プッ」
……!?
今、笑いをこらえきれずに吹き出したよね!?
でも、真顔だよ!?
ハデスの心の中は一体どうなっているの!?
「ううう……わたし……変態やめたいよお……」
心からそう思うよ……
どうやったらやめられるの?
「お前……無理だろ。お前は並の変態じゃないからな。お前から変態を取ったら何も残らないぞ?」
「ベリアル!? そんな事ないもん! 頑張ればやめられるもん!」
「どうやって頑張るんだよ? 具体的に言ってみろ」
かわいいヒヨコちゃんが、変態をやめる為の具体例を示せって!?
このギャップ……
ぐはっ!
かわい過ぎる!
しかも、ちょっと凛々しい顔になっているよ!?
あまりのかわいさに膝から崩れ落ちる。
「ルゥ? どうしたの? 出血が多過ぎたのかしら?」
お母様が心配してわたしの顔を覗き込む。
「……プッ」
え?
お母様が吹き出した後に顔を伏せた?
「ルゥ……お前……左の鼻からも鼻血が出てるぞ……」
ベリアル……?
嘘……
「月海……ほら、左にも詰めてやるからなぁ。プッ……あははは!」
「おお! 両方ちり紙が入ったなぁ! 似合ってるぞ!? あははは!」
「いやぁ。いいもの見たなぁ。あははは!」
あぁ……
おばあちゃんに両方の鼻にティッシュを詰め込まれたよ……
さすがのハデスも呆れ果てたよね……
「ルゥ……ど……んな姿……でも美し……いぞ……クッ」
ハデス!?
クッ!?
笑いをこらえ過ぎて身体が震えている!?
しかも、ちゃんと話せていないよ!?
「月海……人間の国の浄化にはベリアルとハーピーちゃんは連れて行かない方がよさそうだね……」
お父さん……
いつの間に魔王城から来たの!?
恥ずかしい姿を見られちゃったよ……
「月海……プッ……あははは!」
……!
笑われた!?
お父さんに笑われちゃったよ!
うわあぁ!
恥ずかし過ぎるっ!




