お菓子作り(5)
「よし、変な物は入れなかったな……」
ベリアルがかなり警戒しているね。
惚れ薬を入れたと思っているのかな?
ちょっと興味はあるけど、さすがに薬を使ってまで心を奪おうなんて思わないよ。
ベリアルとは、きちんと友達になりたいんだ。
ズルはしたくない。
でも、変態な事はするけどね……
「いっぱい作ったから皆で食べよう?」
フロランタンは大きく作って、切り分けられるからいいね。
ベリアルの分は大きく切ろう。
喜んでくれるかな?
「うまあああい! サクサクのカリカリのウマウマだぁ!」
あぁ……
ベリアルの、かわいいヒヨコちゃんの姿のつぶらな瞳がキラキラに輝いている。
頑張って作ってよかった。
わたしのかわいいヒヨコちゃん……
「喜んでもらえて嬉しいよ。ありがとう。ベリアル」
「ん? なんでルゥが礼を言うんだよ?」
「ベリアルが幸せの島に来てくれてからね……毎日がすごく楽しいんだよ? もちろんベリアルが来る前も楽しかったけど、今はもっともーっと楽しいの!」
「……ルゥ。お前、今……」
「え? ベリアル? どうしたの?」
「お前……ヨダレ垂れてるぞ……」
「ええ!? 今は変態な事は考えていないよ!? って、ヨダレなんて垂らしていないよ!?」
口元を確認しながらベリアルを見ると、恥ずかしそうな顔をしている……?
どうしたのかな?
「……ありがとう」
ベリアル!?
ベリアルが、わたしにありがとうって言った!?
どの部分がありがとうなの!?
また同じ事をして、ありがとうって言われたいよ!
「どの部分が嬉しかったの!? お菓子かな? それとも……ヨダレを垂らさなかったところ!? どこ、どこ!? 教えて!?」
ダメだ。
鼻息が荒くなっちゃった。
またドン引きされちゃったかな?
「オレ……ずっと一人だったから……賑やかなのが楽しいし……それに、誰かに必要とされる事なんてなかったから。……ありがとう」
ベリアル……
そういえば、ベリアルがいなくなっても誰も捜さなかったって言っていたよね。
寂しかったね……
辛かったね……
苦しかったね……
ベリアルをそっと抱きしめる。
「わたしだけじゃないよ? ここにいる皆がベリアルの事が大好きだよ?」
「ルゥ……」
ベリアルと見つめ合う。
久しぶりにベリアルに触れたよ。
かわいいな……
お菓子の甘い匂いがするフワフワの羽毛。
つぶらな潤んだ瞳がわたしを見つめている。
わたしを……
見つめて……
「うわあぁ! ルゥお前、鼻血! 鼻血!!」
え?
ベリアル?
今度は騙されないよ?
「あははは! 大興奮だなぁ!」
「さすが、ルゥは変態だなぁ! あははは」
「月海、ほら早く拭け? ぷふっ」
おばあちゃん……?
え?
まさか……
本当に鼻血……?
「うわあぁ! やだっ!」
興奮して鼻血を垂らすなんて本物の変態だ……
恥ずかし過ぎる。
「なに考えてたんだ!? この、ど変態め!! 手を離せ!」
ベリアルが飛んで逃げていった!?
「あぁ……わたしのヒヨコちゃんっ! 待って!」
「は!? お前の物のわけないだろ!? ど変態!!」
ああ……
『好物でわたしに対する不信感をなくそう作戦』が大失敗に終わった。
でも……
もう一回『ど変態』って言って……




