お菓子作り(2)
「うわあぁ……」
第三地区の広場にある外用のキッチンが……
一分もしないうちに全て破壊された……
「あら? 人間の物はもろいのね……困ったわ。お菓子が作れないわね……」
ヘラ……
自分が怪力だって知らないのかな。
「ヘラちゃんっ!? あの……あれだ! その……幸せの島の海で遊ぼうよ!」
お父様!
最高だよ!
とりあえず、ヘラに第三地区から出てもらってその間にお母様にキッチンを直してもらおう!
「え? でも、ルゥとデメテルとお菓子作りを……」
「キッチンが……その……壊れているから今日は無理じゃないかな? あは……あははは……」
お父様が壊れたキッチンを見て震えているね。
あれ以上浮気をしていたら、お父様がこうなっていたかもね……
「そうね……残念だけどまた今度一緒に作りましょう?」
お父様とヘラが手を繋いで仲良く幸せの島に歩いていった。
あぁ……
被害が少なくてよかったよ。
この前みたいに島を割られたら……
考えるだけで恐ろしい。
「では、直すわ……」
お母様が神力を使って、壊れた物を一瞬で元に戻した……
「うわあぁ! すごい! お母様すごいよ!」
神力は魔力とは、かなり違うね。
浄化したり壊れた物を直したり。
すごいよ……
「皆さん、ごめんなさい。ヘラに悪気はなくて……でも、力が強くて触れる物を全て壊してしまうの……」
「ルーの母ちゃんも大変だなぁ。でも、あの感じだと自分が怪力だって知らねぇみてぇだなぁ」
吉田のおじいちゃんの言う通りだよ。
「はい……ヘラは幼い頃に自分の怪力に気づいてしまって、自分の力がどれほど強いのかを確認する為に天界の物を片っ端から破壊し始めて……」
天界の物を片っ端から……?
高級な物しかなさそうだけど……
「お母様……ヘラはそんな事をして大丈夫だったの?」
怒られなかったのかな?
「ええ。お母様がね……ヘラに気づかれないように、すぐに直していたの。でも、疲れ果ててしまってね。ハデスに怪力だった記憶を消してもらったの」
お母様……
思い出している顔が疲れきっている。
かなり大変だったんだね。
「じゃあ、今度こそ始めましょう?」
笑顔になったお母様が手を繋いでくれる。
「うん! 上手に作ってベリアルにごめんねって言うの!」
「そうね。頑張って作りましょう。気持ちはきっと伝わるわ」
さすが豊穣の女神……
素敵だね。
笑顔が輝いている。
「ヘスティア、一緒に作らない?」
ヘラもいなくなったし危険はなくなったからね。
「あぁ……えっと……わたしは見ているわ(本当の恐怖はこれからよ)」
え?
ヘスティア?
今なんて?
「あら、残念ね。じゃあ二人で作りましょうか?」
お母様が笑顔で話しているけど……
「え? あ、うん」
なんだろう?
胸騒ぎがする?
ん?
ヘスティアが第三地区の皆に何かを話している?
ちょっと待って?
どうして皆でキッチンから離れていくの!?
しかも皆が耳を塞いでいる!?
何?
なんなの!?
これから一体何が起きるのおおぉっ!?




