お母様とルゥ
残りの三か国は聖女だと明かして浄化をする事になったから、日程の調整の為に数日暇になった。
どこの国から浄化をするかで揉めているんじゃないかな?
パパッと行ってパパッとやっちゃえば、すぐに終わるのに……
ということで、今日は朝から天使のお父様とお母様が遊びに来ている。
もちろん、ヘラとヘスティアも一緒だ。
「浄化の旅は大変じゃない? お父様がパパッとやっちゃおうか?」
「あら、それはダメよ。この世界の浄化は聖女の役目なんだから」
「そうよ。ゼウスはルゥに甘いんだから」
「甘やかすだけじゃダメなのよ。ね? ルゥ?」
あぁ……
この感じ……
お父様は相変わらずだね。
でもヘラが怪力だって分かってから、お父様の浮気癖がすっかり落ち着いたらしい。
すごかったからね……
腕を振った風圧で遠くの島が割れたんだ。
あんなものを見せられたらさすがのお父様も、もう浮気はできないよね。
「ルゥ? 人間のお兄様は元気だった?」
お母様が尋ねてきた。
「うん。すごく元気だったし、いつも優しくしてくれるの」
「そうなのね……」
「お母様は、ルゥのお母さんに神力を注いでいたんだよね?」
「そうよ? そうしなければ、ルゥの母親は出産に耐えられなかったはずよ。あの時、拐われなければ今も元気に生きていたのに……人間は愚かね……」
「……うん。でもね? 思ったの。もし、わたしとお兄様がリコリス王国で育っていたらダメな人間になっていたんじゃないかなって。もしかしたら、お兄様とわたしも傷つけ合っていたかもしれないよ……」
「リコリスは、まともな国ではなかったわ……魔族の中ではあったけれどルゥは幸せに育ってきたのね。今のかわいくて素直なルゥを見れば分かるわ」
「うん! わたしはすごく幸せだよ。それに、お兄様の海賊の家族も皆素敵だったの。お父さんはお菓子作りが上手で、パパみたいなの! お姉さんは優しくて面白くてママみたいなの!」
「まぁ、うふふ。それは楽しそうね」
「うん! 今こうして皆が幸せに暮らしていられるのは、お母様のおかげだよ? 本当にありがとう」
「……ルゥ」
お母様が優しく抱きしめてくれる。
「ええっ!? ねぇねぇ? お父様は? お父様は?」
お父様が瞳を潤ませながら、まとわりついてくる。
「ゼウスは余計な事しかしてないでしょ? うるさいわよ!?」
お母様……
怖いよ。
でもその通りだね。
なんて言ったらかわいそうか……
お父様なりに考えて行動していたんだし。
「ううぅ……デメテルちゃん。怖いよぉ」
お父様は本当に神様なんだよね?
泣きべそをかいているけど……
天界はこのお父様が一番偉いなんて心配になっちゃうよ……




