ティータイム(12)
「じゃあ、そろそろ帰ろうか。母ちゃんに出かけた事を伝えてないから心配してるかもしれないし」
そうだね。
もう帰らないとね。
お兄様は王様だし、いきなりいなくなったら心配するよね?
もう一時間くらい経つかな?
「お兄様……お母さんは大丈夫だと思うよ? 魚族長は耳がいいから、ベリアルの力でこの島に来るまでの話が聞こえていたはずだから」
「え? 魚族長ってそんなに耳がいいの? 王宮の外からでも聞こえるなんて、すごいんだね」
「うん! わたしが困っていると、どんなに遠くにいても助けに来てくれるんだ。優しくて強くてカッコいいんだよ?」
「優しくて強くてカッコいいか……お兄様は……? カッコ良くないかな? 変態だからダメかな?」
「え? お兄様? もちろん、すごく尊敬しているよ? リコリス王国の人間が皆笑っているのはお兄様が頑張っているからだよ?」
「尊敬!? 尊敬……ルゥがオレを尊敬……あは……あははは……」
あぁ……
お兄様がシスコンモードになっている……
「オレもっと頑張るっ!」
これ以上ないくらい眩しい笑顔だね。
「でもね……お兄様は頑張り過ぎるくらい頑張っているから、無理だけはしないでね? 身体が心配だよ」
「ルゥが……! 世界一かわいいルゥが、オレを心配してくれているっ!?」
お兄様……
大興奮だね……
「うんっ! 無理しないで頑張るよ! だからまた褒めてね? 褒めてね?」
褒めて欲しいのか……
子犬みたいにかわいいよ。
「うん。また褒めるね」
「うわあぁい! ルゥに褒められちゃったぁ!」
お兄様ってこんな感じなんだね……
「聖女様……(大きくなったね……)」
あれ?
お兄様のお姉さん?
「ルゥでいいよ?」
「え? あ、うん。じゃあ、ルゥ」
「うん! わたしは何て呼べばいいかな?」
「わたしはココだよ。ココって呼んで?」
「ココちゃんか。かわいい名前だね」
「え? 聖……ルゥより八つも年上だから、もうおばさんなんだ……かわいいとか、恥ずかしいよ」
「あぁ……あのね、わたし本当は三十歳を超えているんだよ?」
「え? 三十超えてる? どういう事!?」
「うん、ルゥになる前に違う人間として生きていたの。だからそれと合わせると三十歳を超えているんだよね……」
「……? 違う人間? よく分からないけどルゥが言うならそうなんだろうね……わたしより年上なのか……不思議だね」
「うん。自分でも不思議だよ……」
ココちゃんと見つめ合うと、笑いが込み上げてくる。
「「あははは!」」
ココちゃんとは仲良くできそうだな。
一緒にいると楽しいよ。
「じゃあ、姉ちゃんまたね?」
お兄様がココちゃんに話しかける。
「ああ、ヘリオスは大国を巡るんだよね? 気をつけてね……」
「うん。あ……姉ちゃん?」
「何?」
「約束」
お兄様がココちゃんに指切りの小指を立てて右手を出す。
「え? 何?」
「姉ちゃんもやって?」
「……? こう?」
「約束、忘れてないよな?」
「約束?」
「オレが、誰からも認められる王になったらってやつだよ」
「え?」
お兄様の小指とココちゃんの小指が絡み合う。
「ココ……迎えに来るから……待ってて?」
「……うん」
あれ?
ココちゃんのほっぺたがピンクになった?
二人は仲良し姉弟なんだね。
わたしも、ハーピーちゃんの優しいお姉ちゃんになりたいな。
今のところは……
変態のお姉ちゃんだからね……
『異世界で、人魚姫とか魔王の娘とか呼ばれていますが、わたしは魔族の家族が大好きなのでこれからも家族とプリンを食べて暮らします。~連れ去られた側室とココの物語~』
を短編で投稿しました。
ルゥとヘリオスの母親と、ココが出会った時の物語です。




