ティータイム(11)
そんなに広範囲を浄化できるようになったのか……
あと三か所でだいたいの浄化が終わるんだ。
第三地区の全員が出かける前に浄化が終わっちゃうんだね……
残念がるだろうな。
「ルゥ? どうしたの?」
お兄様が、わたしの顔を覗き込む。
「うん。島の皆が浄化の旅に付いて来るのを楽しみにしているの。でも、あと三か所だと全員旅ができないと思って……」
「あぁ……かわいいルゥ……だったらリコリスに遊びに来るといいよ。他国だと心配もあるけど、リコリスなら何かあってもお兄様が助けられるからね」
「え? いいの? ありがとう。皆も喜ぶよ!」
「……うん。残りの三国はお兄様も付いて行くよ。大国の王ともなると一筋縄ではいかないからね。身分を伏せて旅をして、ありもしない罪で囚われでもしたら大変だし……」
「お兄様? それは、どういう……?」
「ここから先は聖女だと明かして三国を巡ろう。そうしないと、ルゥをいいように利用する愚か者どもが現れそうだ」
お兄様の顔が険しくなった……
「わたしもそうすべきだと思う。犬にも付いて来させよう」
ハデス?
「犬って……お兄ちゃんの事?」
「そうだ。前ウェアウルフ王だからな。魔族が付いて来ればルゥに妙な事はできないだろう。わたしも前ヴォジャノーイ王だが、今は人間の姿だからな。人間に圧をかけられないだろう?」
いや……
人間の姿でも、昨日はかなり圧をかけていたよ?
騎士団長が心配になるくらい怯えていたけど……
「魔王様にこの件を伝えて、他にも付いて来たい種族王がいれば付いて来させよう。ドラゴン王がいればよかったな……」
え?
ハデス?
そんなに人間に圧をかけたいの?
いきなりドラゴンが現れたらどうなるか……
「未だにルゥを人の元に置こうとする連中もいるからね。念には念をだよ?」
お兄様まで……
前から思っていたけど、ハデスとお兄様は似ているよね。
特に、わたしが絡むと怖くなるっていうか……
もし、わたしに人間の王がちょっかいを出してきたら……
この二人は怒り狂って、国のひとつやふたつ簡単に更地にしちゃうだろうね……
お兄様の近くにいて気づいたんだ。
お兄様にも、わたしよりは弱いけど神力があるみたい。
たぶん、この島にいる魔族に精霊を呼び出す方法を教わって精霊の力を使っているはず。
上位精霊まではいかなくても、それなりに強い精霊と契約しているみたいだ。
魔素は簡単に祓えるとして、問題はこの二人だね……
誰か、この二人を見張っていられないかな?
お父さん……は魔王だから忙しいか。
お父様は……うん、余計な事をしそうだからダメだ。
ばあばがいてくれたらなぁ……
ハデスも、ばあばの言葉には耳を貸すからね。
うーん……
おばあちゃんに来てもらおうかな?
でも、そうすると吉田のおじいちゃんも付いて来るのか……
一番の危険人物だからね……
どうしよう。
とりあえず、第三地区に帰ったら皆に相談してみよう。




