ティータイム(10)
「ルゥはどんな子供だったの? やっぱりかわいくて、超絶かわいくて、世界一かわいかったの?」
お兄様が嬉しそうにハデスに尋ねている。
「ルゥは赤ん坊の頃から世界一かわいく、賢く、清らかだ」
ハデス!?
ちょっと待って!?
それは恥ずかしいよ!
特に清らかとか……
さっきまで、わたしがやっていた事を思い返して恥ずかしくなるよ。
今のわたしは、ただの変態聖女だよ?
どこで道を間違えたのかな……
「やっぱり! ルゥは赤ん坊の頃から、かわいかったんだねっ!」
お兄様……
兄の欲目だよ。
ハデスも鍛錬の時以外は、わたしに甘々だったから。
この会話……
すぐにやめさせないと、ただただわたしが恥ずかしい思いをする事になるんじゃ……!?
「ハデスもお兄様も、もうやめよう? 恥ずかしいよ」
「ええ? 今から、いいところなのに」
お兄様……
残念そうにしないで?
子犬みたいにかわいくなっているよ?
「そうだぞ? ルゥの赤ん坊の頃の話を一から全て話すつもりだ」
ハデス!?
一から全て!?
そんなの聞かせなくていいよ……
「大丈夫だから! 普通の赤ちゃんだよ!? それで終わりだよ!?」
「まずは、ルゥが初めて歩いた……」
ハデスは本当に話すつもりだ!
やめさせよう。
わたしが変態になるまでの道を、一から聞かせるわけにはいかないよ!
「ああ! お兄様!? 病気のおばあちゃんは!? 帰る前に治せるかどうかを……」
「え? ばあちゃん? それなら、もう大丈夫だよ?」
もう大丈夫?
どういう事?
「ほら、そこに座っているばあちゃんだよ? すっかり元気になったんだ。ルゥのおかげだよ?」
あのおばあちゃん?
……?
わたしを見て悲しそうな顔をしている?
まだ体調が悪いとか?
でも顔色はすごくいいよね?
「わたしのおかげ? わたしは何もしていないけど」
「ルゥが島に入ったとたん病気が良くなったらしいんだ」
「え? どうして……?」
「昨日、ルゥがリコリスに来て魔素を祓ってくれたでしょ? その時に世界の四分の一の魔素がほぼ祓われたんだ。すごいね! さすが世界一かわいいルゥだ!」
あぁ……
お兄様の心の声が普通の大きさになっている。
お兄様も変態を隠さなくなったんだね。
って、え?
世界の四分の一の魔素が祓われた?
どういう事?
「ハデス? 魔素を祓ったつもりはなかったのに、どうしてなの?」
「それはルゥが成長して聖女の力が強くなったからだろう。今、こうしている間にもこの辺りの魔素が祓われているようだ」
「無意識に浄化する力も強くなっているっていう事?」
「そうだ。この世界の人間の国は地図を四等分すると、ちょうどひとつずつ大国がある。全ての小国に行く必要はなさそうだ。残りの三大国に行けば浄化は終わるだろう。ただ、魔素が酷い場所には直接出向いた方がいいかもしれないがな」




