ティータイム(4)
「このヒヨコが……? どうやって? 背中にでも乗って飛んで来たとか? あははっ!」
お姉さん……
愉快な人間だね……
「いや、そうじゃなくてピカッて光ったらリコリスから島に戻ってたんだよ」
お兄様はリコリス王国にいる時とだいぶ違う。
普通の十五歳の男の子っていう感じだ。
わたしは、前世も合わせれば三十歳を超えているからね……
かわいく感じちゃうよ……
「いい匂いがするっ! あっちだ!」
ベリアルが空を飛んでいく。
あぁ……
カスタードクリーム色のヒヨコちゃんが屋根の上を飛んでいる。
島に小さい家が十軒くらいと、大きい家が一軒建っているのが見える。
わたしのかわいいヒヨコちゃんっ!
屋根の向こうに見えなくなっちゃった……
……あれ?
でも、ヒヨコはニワトリの子ども……
嫌な予感がする。
「うわあぁ! オレは食べ物じゃないぃぃ!」
遠くからベリアルの悲鳴が聞こえてきた!?
しまった!
やっぱりそうなるよね。
「ベリアル!」
慌ててベリアルの向かった方へ走る。
屋根を飛び越えれば追いつけそうだ。
ハデスとの地獄の鍛錬のおかげで低い屋根くらいなら簡単に飛び越えられる。
「え? ルゥ!?」
お兄様の驚いている声が聞こえてくるけど、今はベリアルの方が先だよ。
このままだと、この島が消し去られちゃう!
ベリアルはかわいいヒヨコちゃんに見えるけど、堕天使だった事もある天使なんだよ。
本当は、すごく強いんだ。
「……ヒヨコちゃん、違うよ? 食べないよ。大丈夫だよ? ほーら、油に入ろうねぇ?」
「バカか!? 油に入ったら終わりだろうが!?」
とんでもない会話が聞こえてきたよ!?
ベリアル!
お願いだから、攻撃しないで!
「ベリアル! やめて!」
声が聞こえてきた家に入るとベリアルが壁際に追いつめられている。
「ルゥゥ……」
あぁ……
かわいいヒヨコちゃんがわたしを呼んでくれている……
「おいで! ベリアル!」
腕を広げてベリアルを呼ぶ。
さぁ、わたしの腕に飛び込んでおいで!
そうしたら、撫でて、吸って、それから……
「あは……あははは……」
しまった!
また無意識に笑っちゃった。
でも、ローブのフードを被っているから大丈夫だよね。
って、あれ!?
さっき家を飛び越えた時にフードが取れちゃった?
「うわあぁん! まともな人間がいないよぉ!」
ええっ!?
ベリアル!?
今なんて言ったの!?
「はあ!? わたしは、まともだよ!?」
「……お前、今ヨダレ垂れてるぞ!? 分かってないのか!?」
「え? うわあぁっ!」
本当にヨダレを垂らしていたよ……
恥ずかしい……
しかも知らない人間にも見られちゃったし。
聖女の純真で清らかなイメージが壊れちゃうよ。
ただの、ど変態だってバレちゃったかも……




