ティータイム(1)
魚族長はお母さんとの時間を過ごす為に海に残り、わたし達は王宮に向かう。
海から王宮に繋がる秘密の通路があって、五分くらい歩くと王宮のお兄様の寝室に到着する。
すごい。
本棚の奥に通路が隠されているんだね。
「ルゥ、この通路の事は秘密だよ? この王宮を建てた時に、王がいつでも逃げられるように作られた物らしいんだ。代々の王しか知らないんだよ?」
「そうなんだね。この通路は舟でも移動できるようになっているの?」
人間が歩ける一段高い通路の脇に、海水が流れ込んでいたんだよね。
かなりの深さがあったけど……
「もし怪我をしていたら舟でも逃げられるようになっているんだ。今は母ちゃんがオレに会いに来る時に使っているよ」
「お母さん、すごく優しそうだね。綺麗だしかわいかったよ」
「あはは。そうだね。自慢の母ちゃんだよ」
お兄様は嬉しそうだ。
お母さんの事が大好きなんだね。
ぐぅぅ……
え?
このかわいいお腹の音は……
「うう……お腹空いた……」
ベリアル!?
かわいいっ!
わたしのヒヨコちゃんっ!
「あれ? このヒヨコ、魔族なのかな? 話しているね?」
「え? あの……えっと……」
天使だって教えてもいいのかな?
わたしが神様の娘だっていう事もまだ話していないし。
でも、天使の事は秘密にした方がいいよね……
人間にとって神様とか天使とかは特別な存在だし。
「オレはベリアルだ! てん……」
「ルゥのペットだ」
え?
ハデス?
ベリアルがわたしのペット!?
「は!? 何でオレがペットなんだよ!?」
ベリアルがハデスに怒鳴ったね。
「……ルゥのペットだ」
ハデス……
顔が怖いよ……
「……はい」
ベリアル……
怖かったんだね。
素直にペットになったよ。
でもここで調子にのってベリアルをペット扱いしたら、さらに嫌われちゃうよね?
慎重にいこう!
「ペットは何を食べるのかな? ヒヨコだから、穀物とか? 用意させよう」
「お兄様、ベリアルはお菓子が好きなの」
「お菓子? 人が食べる物で平気なの? 病気にならないのかな?」
「うん。ベリアルは普通のヒヨコちゃんと少し違うから大丈夫なの。甘い物が大好きなんだよ? お菓子を食べる姿がかわいいの!」
「そうなんだね。ちょうど、珍しいお菓子があるんだ。お茶にしようか」
「珍しいお菓子!? やったぁ! 何かな? 何かな?」
ベリアルが、つぶらな瞳をキラキラ輝かせている。
あぁ……
わたしのかわいいヒヨコちゃん……
吸いたい……
撫で回したい……
ダメダメ!
また嫌われちゃう!
我慢我慢!
「うまあああい!」
お兄様の寝室にベリアルのかわいい声が響く。
今日は海賊の家族もいるから外のガゼボには行かないんだね。
「なんだこれ! うまあああい! こっちも……うまあああい!」
あぁ……
かわいいよ。
ニヤニヤしちゃう……
今はローブのフードを被っているから、にやけ放題だよ!
「るぅぅ……だっこぉ」
ハーピーちゃんっ!
かわい過ぎるっ!
ハーピーちゃんを抱っこするとギュッと抱きついてくる。
ぐはっ!
かわいいっ!
「帽子被っててよかったなぁ。聖女様だからなぁ。あははは」
「ヨダレ垂らしたところを兄ちゃんに見られなくてよかったなぁ。あははは」
「ハーピーちゃんは、かわいいですからね。姫様のお気持ち、よく分かります」
あぁ……
さすが、元ハーピー族長だね。
その通りだよ!
ハーピーちゃんは世界一かわいいんだからっ!




