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リコリス王国にお出かけ(18)

「魔族もいるの? だからお兄様は幸せの島で魔族に囲まれても怖がらなかったんだね」 


「うん。わたしを育てて母親代わりをしてくれたのは魚族なんだ」


 お兄様は魚族に育てられたんだね。


「魚族……そうなんだね。でも、魚族は陸に上がれないよね?」


「そうだよ? 海賊は海の中でも陸にいるように動けないといけないんだ。だから、陸の母親と海の母親がいるんだよ?」


「お兄様も家族がいっぱいいるんだね!」


 幸せの島の家族を思い出してニコニコになる。


「うん。陸の父親と海の父親もいるし、じいちゃんとばあちゃんもたくさんいるよ? おばさんって言うと怒る姉ちゃんもいるし……たくさん家族がいるんだよ?」


「賑やかで楽しそうだね! でも……会えなくて寂しいね……」


「ルゥ……耳を貸して?」


「ん? 何?」


「(皆こっそり会いに来てくれているんだ。魚族の母親は海に繋がる秘密の通路に会いに来てくれるよ?)」


「え?」


 お兄様と顔を見合わせる。


「「あははは!」」


 わたしとお兄様の笑い声が重なる。


「リコリスの皆には内緒だよ?」


「うん!」


 よかった。

 一人で寂しく暮らしているんじゃなかったんだ。

 安心したよ……


 海賊と暮らす魚族か……

 

「(あのね、今度魚族のお母さんが来たら訊いて欲しい事があるの)」


「(あぁ……何てかわいいんだ。世界一かわいいっ! )何かな?」


「(魚族長がね、魚族の母親を捜しているの。魚人族の魚族長を本当の息子みたいに大切に育ててくれたんだって。でも色々あって今、行方を捜しているの)」


「え? あれ? どこかで聞いたような話だね……?」


「お兄様?」


「(分かった。今度訊いてみるね?)」


「(うん! すごく会いたがっているんだけど……大昔の戦に巻き込まれたらしくて……海賊の魚族なら何か知っているかもしれないね)」


「……うん。その魚族の母親の特徴って知っている?」


「え? うーん……すごく優しいっていう事しか知らないの……」


「月海、魚人間の母ちゃんの事か? それなら前に魚人間から聞いたぞ?」


 おばあちゃん……?

 知っているの?

 って言うより今の話はどこまで聞かれちゃったのかな?

 団長も赦されて仕事に戻ったみたいだし、護衛の人間は離れた所にいるから聞こえていないみたいだけど……

 聞かれたら困るのはリコリス王国の人間だけみたいだから、おばあちゃんに聞かれても大丈夫か……


「確か……イルカみてぇな見た目で瞳がキラキラしてて宝石みてぇだって言ってたなぁ。だから、人に見つかると何をされるか分からねぇからいつも海の深い所にいたって言ってたぞ?」


 おばあちゃんが一生懸命思い出そうとしてくれている。


「え? 明日……魚族長も一緒に来られるかな?」


 お兄様が真面目な顔になっている?

 何か知っているのかな?


「魚族長も……? お願いすれば来てくれると思うけど……?」


「うん。もしかしたら……」


 お兄様が途中まで話して考え込む。


「お兄様?」


「間違えていたら申し訳ないから、明日まで理由は訊かないで? ごめんね、ルゥ」


 間違えていたら……?

 思いあたる事があるのかな?


「うん。訊かないよ?」


 もしかして、お兄様は魚族長のお母さんの事を何か知っているのかもしれない。

 お母さんが見つかったら魚族長はすごく喜ぶだろうな。

 

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