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リコリス王国にお出かけ(13)

 さすが兄妹……

 わたしがハーピーちゃんを溺愛しているみたいに、お兄様もわたしを溺愛しているんだね。

 でも、客観的に見るとシスコンの痛い兄だ……

 わたしはハーピーちゃんへの想いを絶対に口には出さないように気をつけよう……


「さすが、ルーの兄ちゃんはルーにそっくりだなぁ。あははは」

「妹を見てヨダレを垂らしそうなところは、ルーがハーピーちゃんを見てる時と同じだなぁ。あははは」

「月海がハーピーちゃんを見てブツブツ呟いてる時と同じだなぁ。あははは」


 ええ!?

 嘘!


「わたしも口から出ちゃっていたの!? 恥ずかしい……」


「ああ。いつも『わたしの弟は世界一かわいいっ! 』ってヨダレを垂らしそうな勢いで呟いてるぞ? いや、実際垂らしてるか?」


 うわあぁ!

 嫌だ!

 無意識って怖い!

 しかも、教えてくれたのが変態の吉田のおじいちゃんっていうのが更に恥ずかしい……


「恥ずかし過ぎる……」


「るぅは、おれをかわいいと、はずかしい?」


 雪あんねぇに抱っこされているハーピーちゃんが潤んだ上目遣いで見つめてくる。


 あぁ……

 かわいい……


「やっぱり、わたしの弟は世界一かわいい……」


 ニヤニヤが止まらないよ!

 もう変態でもいい!

 

「あははは。さすが兄妹だなぁ! そっくりだ! あははは」

「ヨダレが出てるぞ? あははは」


 雪あん姉と吉田のおじいちゃんが大爆笑している……


「『ルゥ』の兄ちゃん、オレは月海のばあちゃんだ。いいか? 確かに悪い事をしたら罰を与えるのは当然だ。悪い前例は作らねぇ方がいいだろう。でもなぁ……皆、殺しちまったら誰もいなくなっちまう。この団長は間違いなく忠臣だ。罪を赦すって事も大切なんだぞ? 王として人の上に立つのは大変だろう? でもなぁ、一時の感情で動いたらダメだ。……いつか必ず後悔するぞ?」


「ルゥのおばあ様……ですか?」


 お兄様が若くて綺麗なおばあちゃんを見て首を傾げている。

『おばあちゃん』には見えないからね。


「ああ。前の世界のばあちゃんだ。いいか? この団長は、部下や家族の失敗を被って責任を取ろうとしている。他人に罪をなすり付ける奴もいるこの世の中で、こんな人格者はなかなかいねぇぞ?」


「ええと……おばあ様? ですか? では、おばあ様はどうしたら良いと思われますか?」


「そうだなぁ。今回はオレ達にも落ち度があった。それに、月海の宝物を見つけてもらった。あのお嬢ちゃんはただ甘やかされて育ったってわけじゃなさそうだ。芯の強さを感じたからなぁ……月海の友達になってもらうのはどうだ? 正直、月海は人間よりも魔族に考えが近いからなぁ。人間らしい考えを教えてもらう先生になってもらえたら月海の為にもなる。そうなれば『ルゥ』の兄ちゃんにも、ちょくちょく会いに来る事ができるだろう。どうだ?」


「え? (ルゥがちょくちょく遊びに来る?)」


 お兄様がうつむきながら呟いている?

 

「お兄様……? 大丈夫?」


 疲れちゃったかな?


「……さすがルゥを育てたおばあ様です。素敵な考えですね。そうしましょう! 早速、アンジェリカを呼ぼう!」


「お兄様、待って? えっと……アンジェリカ? ちゃんは拐われて大変だったから、しばらくはのんびりして欲しいの。いきなり知らない人間に連れ去られてすごく怖かったはずだよ? だから、アンジェリカちゃんが落ち着いたらにしたいの。もちろん、無理矢理先生をさせるのもダメだよ?」


「そんな! ルゥに毎日会いたいのに!」


 お兄様が駄々っ子みたいになっている……

 さっきまで団長に見せていた顔とは大違いだ。

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