リコリス王国にお出かけ(5)
とりあえず、悪者も生きているみたいだし。
女の子も無事でよかったよ。
でも……
おじいちゃんを見つめる女の子の瞳が、恋に落ちた感じになっている!?
吉田のおじいちゃんは顔が昭和の大スターだからね。
顔は素敵だし強いから好きになっちゃった……?
騙されないで!
性格は変態だよ!?
「おじいちゃん……大丈夫だった?」
「んん? ルーいたんか?」
やっぱり吉田のおじいちゃんだよね?
さっきの風の魔術は何だったのかな?
「捜していたんだよ? 皆待っているよ?」
「そうか、そうか。じゃあ行くか」
「あの……お名前を……」
女の子が吉田のおじいちゃんに名前を尋ねている……
「オレか? 名乗るほどの者じゃねぇよ。かっかっかっ」
まだやっているよ……
「とりあえず、悪者を警備兵に引き渡そうか。あと女の子も警備兵の所に連れて行って保護してもらおう」
一刻も早く保護してもらわないと。
吉田のおじいちゃんが妙な事をする前に……
「ありがとうございます。ところで……あなた様は、この『名乗るほどの者ではないお方』とはどの様なご関係で……?」
どのようなご関係!?
やっぱり吉田のおじいちゃんを好きになっちゃったの!?
「わたしは、ルゥ。近所に住んでいる親戚みたいな関係……だよ?」
さすがに『恋人の孫です』とは言えないよね。
吉田のおじいちゃんは今は見た目が若いから、孫とか言われてもピンとこないだろうし。
それにしても、この感じ……
まさか本当に好きになっちゃった!?
「そうですか……」
いやいや、ホッとしないで!?
平気で裸踊りをするような変態だよ!?
「あの、もしよろしければ我が家でお礼がしたいのですが」
早く吉田のおじいちゃんから離した方がよさそうだ……
これ以上好きになられたら困るよ。
一応、おばあちゃんの恋人だし。
吉田のおじいちゃんは変態だし。
「ああ、気持ちはありがてぇんだけど服屋に行くんだ。なぁ? ルー」
よかった。
おじいちゃんが断ってくれて助かった。
「うん。その後、お兄様にも会わないとだから……」
うまく断れそうだね。
「服屋……? ですか?」
それにしても綺麗な人間だ。
金色の縦巻きロールの髪に緑の瞳。
お人形さんみたいにかわいい。
それに、着ている服も繊細な刺繍がしてあって高級な感じだね。
こんなお金持ちのお嬢様が、従者もなくお出かけなんてするのかな?
……あぁ、服屋の話をしないと。
「弟の服を買いたいの」
世界一かわいい弟なの!
あぁ……
思い出しただけでニヤニヤしちゃう。
「ルゥさんの弟さんは、おいくつですか?」
フードで顔が隠れていてよかった。
ヨダレが出ちゃっていたら恥ずかしいし。
「まだ赤ちゃんで……最近歩けるようになったばかりなの」
「だとしたら既製品は出回っていないはずです……」
「やっぱりそうなんだね……困ったな」
おばあちゃんに借りている服はブカブカなんだよね。
でも、ずっと抱っこしていれば大丈夫かな?
「我が家の兄の着た物でよろしければ……いかがですか?」
え?
でも、これ以上吉田のおじいちゃんを好きになられたら困るし。
「ありがとう。でも連れもいるし。皆、賑やかだから遠慮させてもらうね? 今、噴水の前で待っているの」
「そうですか……『名乗るほどの者ではないお方』は……あの……」
この綺麗な人間……
すごく切なそうに吉田のおじいちゃんを見つめているよ。
まさか本当に好きになっちゃったの!?




