一番怖いのは……? ~後編~
今回はお父さんが主役です。
「ばあば!? 大丈夫?」
月海……
よかった。
間に合ったか……
「ルゥ……来たのね?」
ドラゴン王は少し冷静になったみたいだ。
「ばあば……プリンをたくさん作ったの。一緒に食べよう?」
かわいがっている月海の頼みならきっと聞いてくれるはずだよ。
「ルゥ……今はいいわ。目を閉じていなさい。血が出るわよ……」
ドラゴン王……
怖いよ?
「ばあば……うん。分かった。全部終わったら皆で食べようね」
え?
月海?
魔族の中で育ったから命の重さの感覚が違うのかな?
「……そうね。そうしましょう」
納得した!?
ドラゴン王……
やめないんだね……
「ばあばがリヴァイアサン王を傷つけても、わたしが傷を治すから大丈夫だよ? どんどんやっていいよ?」
月海……
そうか、月海は聖女だったね。
「聖女様……ありがとうございます」
リヴァイアサン王が涙を流して感謝している。
「ルゥ、あなた……こいつの味方をするの?」
ドラゴン王の怒りが月海に向かおうとしている!?
このままだとまずい。
止めないと……
「魔王様……全てルゥに任せてください」
月海を助けようとするボクをハデスが止めた?
「でもハデス、このままだと月海が……」
「大丈夫です。ルゥはこの程度の事は何度も経験しています。問題ありません」
「え? でも……」
「ばあば、絶命するギリギリで止めてね? わたしが完全に傷を治すから。そしたら、また攻撃していいよ? 何度でもわたしが治すから。でも、リヴァイアサン王があまりに辛くて殺してくれって言うかもね……死ぬほどの苦しみを何度も味わうんだから。ね? リヴァイアサン王?」
月海がキラキラ輝く笑顔で話している。
怖いよ……
ドラゴン王より怖いよ……
「戦になったらね……真っ先に命を落とすのは弱い存在なんだよ。何の抵抗もできずに無残に命を奪われるの。今リヴァイアサン王が死ねば、そうならずにヴォジャノーイ王がリヴァイアサン王国を支配するはずだよ。誰かが傷つく前に王だけがいなくなれば簡単だよね」
月海……
笑いながら話しているから怖さが倍増しているよ?
「聖女様……」
リヴァイアサン王が震えながら月海の事を呼んでいる。
ボクも怖くなってきたよ……
「決まりはね……守る為にあるんだよ。こういう事にならないようにきちんと守らないとね」
そうだね。
月海の言う通り、ボクもちゃんと決まりを守るよ……
「はい。聖女様。次からは……次があるのなら必ず守ります。わたしが愚かでした」
リヴァイアサン王……
数日前に、魔王のボクがヴォジャノーイ王国を攻撃するのをやめろって言った時は言う事を聞かなかったのに。
月海が怖いんだね……
何をするか分からない先の読めない危うさがあるから。
「謝る相手が違うんじゃない?」
月海っ!?
笑顔だけど怖いよ!?
「ああ……本当に申し訳ありませんでした。ドラゴン王……お赦しください」
リヴァイアサン王……
素直だね。
見ていてかわいそうになるよ……
「……そうね。分かればいいのよ」
よかった。
ドラゴン王の機嫌が直ったね。
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
リヴァイアサン王が心の底から感謝している……
本当によかったよ。
これで全て解決……
「じゃあ、始めようかしら?」
え?
ドラゴン王?
何を?
「うん! ばあば、任せて!」
え?
月海?
「え? え? ドラゴン王!? ぎやああああ!」
あぁ……
リヴァイアサン王……
話の流れ的に、もう助かったと思ったよね。
怖いね……
うん。
怖いよ……
絶対にこの二人を敵には回さない……
この場にいる全員の心がひとつになった……




