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家族でお出かけ~人間の国、後編~

 ママは一目見て気に入った、赤いドレスに着替えてフィッティングルームの前にあるソファーに座っている。


「フフフ……血の色だ」


 って言って喜んでいる姿を店主に見られなくて良かった。

 

 パパは、身体が大きいからお店にある一番大きい服を出してきてもらった。

 白いシャツが、良く似合っている。


 じいじは買わないみたいだね。


 パパの肩にいるピーちゃんも苦しくないように首にリボンを巻いてもらった。

 ピーちゃんは、まんざらでもなさそうにしている。

 

 店主……

 ここぞとばかりに高そうなリボンを選んだな……


「公女様! こちらはいかがですか?」


 う……

 宝石がジャラジャラ付いているドレスだ。

 これは無理だよ。


「あの……もっとシンプルな物が……」


 キランッ!

 

 え?

 店主のメガネが光った?

 慌てて奥の部屋に行ってドレスを選んでいる!?


「こちらとこちらが公女様にお似合いになられるかと!」 


 持って来てくれたドレス……

 確かにシンプルだけど、布の肌触りが良過ぎる!

 これは絶対に高いやつだ。

  

 ひとつはわたしの瞳と同じ色の青いドレス。

 もうひとつは淡いピンクと白。

 

 ソファーに静かに座って、わたしを見ていたじいじが口を開く。


「どちらも、もらおう」


「いやったあー!」

 

 じいじの言葉に、店主が大声で叫び天を仰いだ……


 

 結局、ピンクと白のドレスを着ると良く似合うからって髪飾りまで買わされた。

 商売上手だ。

 じいじ……

 金貨をいっぱい持っていたよね。

 ヴォジャノーイ王宮も金ピカだったし、ヴォジャノーイ族はお金持ちなのかな?

 じいじと手を繋いで町を歩く。

 パパとママも、珍しい物ばかりの人間の国にキョロキョロしながら付いて来る。

 

 さっきはドキドキしたけど今はしないね。

 ママが疲れるとドキドキするって言っていたから、わたしも疲れているのかな?


「ここだ」


 じいじが連れて来てくれたのは誰かのお墓……?

 立派なお墓だし身分の高い人間の物かな?

 何で人間のお墓参りをするんだろう?


「じいじ、誰のお墓なの?」


 人間の知り合いのお墓なのかな?

 

「このお墓には、じいじに幸せを与えてくれた人間が眠っているのだ」


 人間がじいじを幸せにしたの?

 辛そうなじいじの顔……

 これ以上訊いたら悲しませちゃいそうだ。


「じいじの大切な人間なら、わたしにとっても大切な人間だね」


 手を合わせたけど、日本みたいに合掌で良かったのかな? 

 

 じいじの事を幸せにしてくれてありがとうございました。


 心の中でお礼を言ったけど……

 さっきから誰かの視線を感じる。

 じいじとママも気づいているみたい。

 また魔族に狙われているのかな?


「さぁ、買い物をして家に帰ろう」


 じいじと手を繋いで歩き出す。

 じいじもママも普通にしているし、気配も魔族ではなさそう。

 人間?

 どうして付いて来るんだろう?


「ルゥが欲しい物を買っておいで。オークも一緒に欲しい物を買うといい」


 じいじが銅貨をたくさんくれたね。

 クッキーとかパンを売っているお店があるかな?


「ありがとう。じいじ」


 日本の商店街みたいに道路の両脇にたくさんのお店が並んでいる。

 石畳をパパと手を繋いで歩く。

 人間の姿のパパはいつもより少し背が低い。

 わたしも普段は裸足だけど靴を履いているから、パパといつもより顔が近い。

 パパは楽しいんだね。

 ほっぺたがピンクになっている。


「タノシイデスネ、タノシイデスヨ」

 

 パパの肩にいるピーちゃんが楽しそうに話している。

 大きくなり過ぎて、わたしの肩に乗っちゃダメだってママに怒られてからはパパの肩にいるんだよね。

 もうパパのバスケットに入るつもりもないみたいだし。

 このままずっと隠れないでいてくれたら嬉しいな。


「レディ、あの……」


 人間の男性が声をかけてきた?

 良い服を着ているし、貴族かな?


 レディ?

 わたしが?


「なぁにぃ?」


 パパが二メートルくらいの身長で見おろしたね。

 顔はオークの姿の時と同じだから……


「ごめんなさーい!」


 顔の怖さに人間が走って逃げて行った。

 まぁ、こうなるよね。

 人間は何の用だったんだろう?


 クッキー屋さん、パン屋さん、果物屋さん。

 パパとたくさん買い込んでいると、じいじが迎えに来る。


「そろそろ帰ろうか」


「うん! じいじ、たくさん買ったよ」


 ニコニコのわたしを見てじいじも笑顔になったね。


「「キャー!」」


 人間の女性が、笑顔のじいじに黄色い悲鳴をあげた?


 うぅ……

 わたしのじいじなのに。

 また胸がモヤモヤする。


 そういえば、さっきまで付いて来ていた人間の気配がしなくなった。

 じいじとママで何かしたのかな?

 ……生きているよね?

 

 人間のいない波打ち際から、じいじの魔術で幸せの島に帰る。


 この時はまだ知るよしもなかった。

 幸せの島でこれから大事件が起こるという事を……

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