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家族でお出かけ~人間の国、前編~

 翌朝、幸せの島に帰る時間___


 波打ち際まで見送りに来てくれた王様と、たくさんのヴォジャノーイ族の皆が悲しそうな顔をしている。


「姫様、またいつでも遊びに来てください」 


 王様が寂しそうに話しかけてくれたけど……

 すごく優しい王様だね。

 じいじの甥っ子らしいけど性格はあまり似ていないみたい。

 じいじも優しいけど……

 何て言うか……

 うーん……

 じいじはわたし以外には厳しいからね。


「王様、ありがとう。楽しかったよ」


「姫様!!」

「姫様! 行かないでぇ!!」

「嫌だぁぁあ! ずっと、ここにいてぇぇっ!」


 ニコニコの笑顔でお礼を言うと、ヴォジャノーイ族の皆が大騒ぎになった……

 怖いくらい必死だけど……

 どうしたんだろうね。

 まさか、わたしが帰った後にじいじが戻って来てダメ出しされるんじゃ……

 まさか……ね。


 じいじの魔力で海の中を進むわたしの耳に、いつまでもヴォジャノーイ族の悲痛な叫びが聞こえていた……

 

 色々あったけど、またお父さんのお墓参りに来たいな。

 

 あれ?

 じいじとママが話している声が聞こえてくる。

 

「このままハーピー族の島に行けるか?」


 ママの言葉に、パパの肩にいるピーちゃんがあきらかに嫌そうな顔をしている。


「今日は人間の国に行くから無理だな」


 人間の国!?

 今から皆で行くの?

 まさか……

 人間を襲いに行くんじゃないよね?


「イヤ、ザンネンデスネー。ホントニザンネンデスー。イキタカッタデスヨー。アハハ」


 あれ?

 ピーちゃんがカタコトだけど普通に話している?


 じいじが、いぶかしそうな目つきでピーちゃんを見ているね。

 いつの間にこんなに話せるようになったんだろう?

 昨日までは言葉を理解していない振りはしていたけど、話せなかったよね?


「ハーピー族の島には明日行こう」


 じいじの言葉にピーちゃんが静かになった。

 何か考えているみたい?


「お前、明日の朝になっても逃げるなよ」

 

 ママの言葉にピーちゃんがビクッとした?

 逃げようとしていたの?

 ハーピー族長ってそんなに怖いのかな。


 

 人間の国が見えてくる。

 人間がいない波打ち際から陸に上がる。


 初めて来る人間の国。

 じいじの話によると、武力に優れた小国らしい。

 ちなみに襲いに来たわけではなさそうだ。

 じいじが人間の姿に見えるようになる魔術をかけてくれる。

 

 ママは元々綺麗な顔立ちをしている。

 紺色のショートカットでツンツン外はねした髪。

 赤紫の瞳で、肌も色白で陶器みたいに綺麗。

 そのママが人間の姿になると、綺麗過ぎて見とれちゃう。


 パパは元々の緑色の肌を、人間の肌色にして耳が人間風になっている。

 下の牙は出たままだし、背も二メートルくらいあるけどいいのかな?

 あきらかに手抜き感が……

 でも、パパのぽっこりお腹がそのままで嬉しいかも。

 柔らかくて気持ちがいいんだよね。


 じいじは元々スリムで背が高い。

 ヴォジャノーイ族の姿の時もそうだけど、すごくスタイルが良い。

 いつもの髪が生えていない蛙の顔が、銀色の短髪に白い肌になる。   

 赤黒い瞳はそのままなんだね。

 四十歳くらいに見える。

 誰が見ても、整った顔立ちのカッコいい素敵な紳士だ。

 

 わたしは人間だからいつもと変わらないけど、日焼け止めは塗っていない。


「とりあえず、服を買いに行こう」 


 じいじの後について町を歩くと……

 じいじを見て、人間の女性達がキャーキャー言っている。

 

 嫌な感じ。

 わたしのじいじなのに。

 キャーキャー言わないで……

 何でだろう?

 胸がモヤモヤする……?

 

 わたしが足を止めると、じいじが手を繋いでくれる。

 温かい手だ。


 悔しそうな女性達の声が聞こえてきたけど、すぐに静かになった。


 ……?

 どうしたんだろう?

 まさか、じいじが怖い顔をして怯えさせたとか?


「人間達はルゥがかわいいから見とれているようだ」


 じいじが耳元で囁いたけど……


 え?

 何で?

 じいじに見つめられるとドキドキする。


 さっきまでとは違い、手を繋いで並んで歩く。

 人間の視線を痛いくらい感じる。

 ショーケースのガラスに、じいじとわたしが映る。


 わたし、どうしちゃったんだろう?

 ずっとドキドキしているよ?


「着いた。この店で買い物しよう」


 じいじの言葉に店を見上げる。

 

 え?

 このお店?

 すごく立派だよ。


 真っ白い外壁に、ゴールドの細工が施されている。

 同じゴールドだけどヴォジャノーイ王宮とは、ずいぶん違う。


 こんなに高そうなお店……

 お金は大丈夫なのかな?


 前に、じいじがこの世界の通貨について教えてくれた。

 大体だけど、銅貨一枚が十円、銀貨一枚が千円、金貨一枚が十万円くらいの価値みたい。

 パンは銅貨二枚くらいで買えて、平民なら一か月に銀貨三枚あれば良い暮らしをできるらしい。

 金貨を見た事がある平民はほとんどいないんだって。

 

 じいじは、お金を持っているのかな?

 まさか商品を奪い取ったりしないよね?


 お店に入ると店主らしい中年の女性がいる。

 当然の事だけど人間だね。

 わたしが人間のお店に買い物に来る事になるなんて思いもしなかったよ。


「これは、これは。公爵様……」


 店主がじいじに話しかけたけど……

 公爵様?

 じいじが?


「今日はバカンス帰りでな。今、着る家族の服が欲しいのだが」


 バカンス帰り……

 じいじは人間の姿の時は公爵っていう設定なのかな?

 前にも買い物に来た事があるみたい。


「これは、これは。お孫様の公女様ですね? いらっしゃいませ。お会いできて光栄です」


 え?

 どうして孫だって分かったの?

 それに、今のじいじの見た目だとおじいちゃんには見えないけど。

 

「本日は当店の品物をお召しになっていただき光栄です」


 じいじからのプレゼントの白いワンピースは、このお店で買ったの?

 

「世界一美しい孫娘を、更に美しく着飾らせてくれ。ついでにそっちの二人の物も適当に頼む」


 ついでって……

 パパとママは、お店に飾ってある人間の服や小物に夢中で聞こえていなかったみたい。

 良かった。


「公女様! そちらも、こちらの服もお似合いです。お待ちください。あちらの服も! あぁ……美し過ぎて一着に決める事ができませんっ! ハァハァ……」


 店主……

 張り切り過ぎて酸欠になっている……

 この人間の国は、田舎でもないけどすごい都会でもなさそう。

 上客のじいじに高い物を買わせたいのは分かるけど熱量がすごい!

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