ハーピーちゃんとイフリート王子(3)
今回は、イフリート王子が主役です。
「前王! このガキもルゥに惚れてるぞ!? いいのか?」
いいわけないだろ?
嫉妬心の塊みたいな奴だからな。
「……ハーピーは弟だ。それ以上でも以下でもない。それに、ハーピーを抱いていれば他の奴らを吸わないからな」
は?
吸わないって何だよ?
「こいつ……何で赤ん坊の振りなんかしてるんだよ!?」
普通に話せるし、歩けるだろ!?
何やってるんだよ?
「そんなのきまってるだろ? るぅが、あまやかしてくれるからだ」
は!?
何を得意気に言ってるんだ?
前王は、それでいいのか?
嫉妬はしないのかよ!?
「前王! ルゥ以外は皆、こいつがこういう奴だって知っているのか?」
「魔族は耳がいいからな。上手くやっているから、人間は知らないだろう」
はあ!?
この島はどうなってるんだよ?
「おまえ、かえれ。もうくるな」
猫かぶりめ!
かわいい顔してとんでもない奴だ。
「お前、ルゥにバラすぞ?」
バラされて嫌われろ!
「はなせばいいだろ? るぅは、おまえのはなしなんか、しんじないぞ?」
はあ!?
よし、いいんだな?
話すからな?
後になって泣くなよ?
「ごめんね。遅くなっちゃった。お父様達が遊びに来てくれたよ? あれ? イフリート王子、どうかした?」
「ルゥ、聞いてくれ! こいつは赤ん坊じゃないぞ!」
性格に問題がある、とんでもない奴だ!
「……え? 一か月前に産まれたばかりだよ?」
「そうじゃなくて、こいつはルゥを騙し……」
「うえぇぇん……」
猫かぶりが泣き真似で遮った!?
バレるのが怖いんだな?
全部バラしてやるからな!
「ルゥ、こいつは……」
「ゼウス! もう赦せない! イオに手を出すなんて!」
「落ち着いて? ヘラちゃん……つい出来心で」
「はあ!? 出来心って何よ? 絶対赦せない! ヘスティア、やっちゃって!」
「本当にゼウスは愚かね。もう火干しじゃダメね。二度と悪さできないように切り落としちゃう?」
「そうね。そうしましょ?」
「うわあぁ! デメテルちゃん助けてえぇ」
え?
何だよ、こいつら?
真っ白い翼?
まさか天族!?
四人もいるぞ?
どうして天族がいるんだ!?
魔族と天族は平和協定は結んでいるけど仲は良くないはず。
「ルゥ……何で天族がいるんだよ?」
しかも何か怖い事を言っているし。
切り落とすってアレだよな?
「ああ……あのね、わたしのお父様とお母様とおば様達だよ?」
「……? え? 何がだ?」
ルゥの父親は魔王だろ?
どうなってるんだよ?
前王はヴォジャノーイ族から人間になって、猫かぶりの赤ん坊がいて、ルゥが天族の子?
もう意味が分からない……
「とりあえず、火干ししちゃいましょ?」
「うわあぁ! ヘスティアちゃん、ごめんなさいいい! ぎゃああああ!」
「きゃあああっ」
猫かぶりが、天族の悲鳴の真似をした……
魔族は生まれつき天族が嫌いだからな。
虐げられる天族を見て嬉しいんだろう……
この島は相変わらず怖過ぎる……
あの、火干し……? されている天族は大丈夫なのか?
これは……
オレの本能が逃げろって叫んでいる。
「魔族! 助けてぇ!」
うわあぁ!
天族がオレに助けを求めた!?
「あらあら、魔族のお兄さんはゼウスの味方なのかしら? うふふ」
え?
これは……
巻き込まれる予感……
逃げないと、まずいぞ!
「ああ! 父上に早く帰れって言われてたんだ!」
慌ててジャバウォックに乗る。
「グルル」
(逃げるのか)
「仕方ないだろ? 怖いんだよ!」
……!
猫かぶりがルゥに抱っこされながらオレを見てニヤニヤ笑っている!?
次こそはルゥにバラしてやるからな!
ああ……
オレ、何しに来たんだっけ?
空を飛ぶジャバウォックのナマズみたいな髭が、ムチみたいにオレの顔を叩く。
……地味に痛いな。




