ハーピーちゃんとイフリート王子(2)
今回は、イフリート王子が主役です。
ルゥに誘われてガゼボでプリンを食べる事になった。
このガキ……
いや、弟も一緒に……
それにしても、ずっとルゥに抱っこされているな。
この猫かぶりめ。
「ジャバウォックは何を食べるかな? 魚とか食べる?」
ルゥはジャバウォックの心配までしてくれるのか。
優しいな……
「グルル」
(肉食べてきた)
「腹いっぱいだって言ってるぞ?」
肉を食べてきたのは秘密だ。
「イフリート王子にはジャバウォックの言葉が分かるんだね。すごいね」
ああ……
笑った顔もかわいいな……
いや、綺麗だ……
「あううぅ」
はあ!?
何が『あうう』だ!
この猫かぶりめ!
本当は普通に話せるだろうが!
「ん? ハーピーちゃんは食べさせて欲しいのかな?」
「あい!」
うぅ……
猫かぶりめ、嬉しそうに笑っているな。
笑うとかわいい……
ルゥはかわいい物が好きみたいだし、完全にメロメロにされている。
「ハーピーちゃんはかわいいね。いっぱい食べて大きくなろうね。はい、あーんして?」
「あーん」
あーん!?
オレもして欲しい!
この猫かぶりめ!
どうせ隠れて肉を食べてるんだろう?
うっすら肉の臭いがするぞ?
ルゥは完全に騙されているな。
そいつは、この島の中で一番危険な奴だ!
あ……
一番危険なのは、前ヴォジャノーイ王か……
あいつには、なるべくなら関わりたくないからな。
そういえば、姿が見えないな。
出かけているのか?
「ルゥ……あの……前ヴォジャノーイ王は?」
頼むから出かけていてくれ!
「ハデス? ここにいるよ?」
ハデス?
ここにいる?
……?
ガゼボの中に誰かいるけど、前ヴォジャノーイ王じゃないな。
誰だ?
黒髪に黒い瞳の普通の人間……
人間にしては妙な匂いがするような?
「……わたしに何か用か?」
人間が話し始めた。
眼光が鋭過ぎだろ。
威圧感がすごいな。
「え? ……誰だ?」
怖過ぎるぞ?
「ああ、王子は初めてだったね。じいじだよ?」
ルゥがキラキラの笑顔で教えてくれる。
ああ……
綺麗だ。
見とれてしまう……
ん?
じいじ?
ルゥは、前ヴォジャノーイ王を『じいじ』って呼んでいたよな。
……?
いや……?
あれ?
どういう事だ?
「……今度は、何を詫びの品とするのだ?」
詫びの品?
え?
まさか……
この人間っぽいのが、あの前ヴォジャノーイ王!?
嘘だろ?
父上も人間の姿になれるが匂いまでは変えられないぞ?
ん?
ルゥの膝にいる猫かぶりがオレを見ながらニヤニヤ笑っている?
「あ……洗濯物を取り込まないと。ハーピーちゃんはガゼボで待っていてね?」
「るぅぅ……」
猫かぶりが連れて行って欲しそうにしているな。
え?
ちょっと待て!
ルゥ、行くな!
この二人と留守番!?
無理無理!
「……」
うわあぁ……
無言だ……
気まずい。
この猫かぶりが普通に話せる事をルゥ以外は知っているのか?
前ヴォジャノーイ王は、ルゥを誰にも取られたくないと思っているからな。
きっと猫かぶりを嫌っているはずだ。
「……おい。おまえ。るぅにちかづいたら、ころす」
……!?
猫かぶり、お前さっきまでと違い過ぎるだろ!?
お前の頭の中は、どうなってるんだよ!?
「お前……怖いぞ? どうしたらそんな性格になるんだよ」
前ヴォジャノーイ王は猫かぶりを嫌っているはずだ。
助けてくれ!




