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ハーピーちゃんとイフリート王子(1)

今度は、イフリート王子が主役です。

 幸せの島に行くのは久しぶりだな……

 ルゥは前ヴォジャノーイ王と、つがいになったのか……

 オレは……

 初めて会った時からずっとルゥの事が好きだった。

 あの時……

 島を火の海にしてルゥに嫌われたうえに、前ヴォジャノーイ王にイフリート王宮の家具を奪い取られて父上に散々怒られたな……

 父上の話によると幸せの島はオレが最後に来た時とは色々変わったらしい。


「グルル……」

(王子)


 オレを乗せて飛んでいるジャバウォックが振り返って話しかけてきた。


「何だ?」


 ジャバウォックは赤ん坊の頃から一緒にいるから何を言っているのかオレには全部分かるんだ。


「グルルルル」

(島に結界が張ってある)


「結界? 防御膜じゃなくてか?」


「グルル」

(島に入れるか分からない)


「え? 入れないかもしれないのか?」


 困ったな。

 こんな世界の端まで来たのに……


「グルル」

(近くまで行ってみる)


「ああ。あれ? あそこに見えるのは何だ?」


 島で小さいのが動いている。

 まさか、オレを火あぶりにしたマンドラゴラか?

 それにしては大きいな。


「グルル」

(ハーピー族だ)


「ハーピー族? ルゥの母親がハーピー族だったな」


 子が産まれたのか?


 結界のギリギリまで近づく。

 手を伸ばして入れるか確認しよう。

 いきなり焼かれたり水責めされたりしないよな?

 ああ……

 怖い……


「グルル」

(早く)


「はあ!? 怖いんだよ! じゃあ、お前が先に中に入れよ!」


「グルル」

(オレ、嫌だ)


「お前も怖いんだろ? オレも怖いんだ!」


「グルル」

(何か飛んできた)


「は? 何が? うわあぁ!」


 飛んできた物にぶつかったジャバウォックが体勢を崩した!?

 このままじゃ結界に身体ごと触……

 あれ?

 島に落ちた……

 普通に結界に入れたぞ?

 でも砂浜に落ちたから痛い……


「何がぶつかったんだ?」


「グルル」

(石)


「石? 誰かが投げたのか? すごいスピードだったぞ!? それに普通に結界の中に入ってるし……」


 何の為の結界なんだ?

 簡単に入れたら結界の意味がないだろ?

 砂浜に座り込んでいるとハーピー族の子が歩いて来る。


「おまえら、だれだ? なにしにきた?」


 小さいくせに上手く話すんだな。


「オレはイフリート王子だ。ルゥに会いに来た」


「るぅに……?」


 何だ?

 小さいくせに威圧感がすごいな。

 睨みつけられているぞ?

 まさか、こいつが石を投げたのか?

 そんなはずないよな。

 まだ赤ん坊だろ?


「ルゥは留守か?」


「おまえに、おしえるひつようはない」


 は?

 なんだよこいつ。

 性格悪過ぎだろ……


「ハーピーちゃーん? プリンができたよ」


 家からルゥの声が聞こえてきた。

 

 なんだよ、いるんじゃないか。

 それにしても生意気なガキだな。

 

 ルゥが家から出て来るのが見える。


「ハーピーちゃん……あれ? イフリート王子? いらっしゃい。久しぶりだね」


 ……!

 ルゥ……

 成長したのか。

 綺麗だ……


「うえぇん……るぅぅ……」


 生意気なガキが泣き始めた?

 なんだよ、こいつ。

 どうしたんだ?

 さっきまでスタスタ歩いていたのに、急にヨチヨチ歩き始めたぞ?


「ハーピーちゃんは、どうしたのかな? お姉ちゃんが抱っこしてあげようね」


「るぅぅ……ひっく」


 べそをかきながらルゥに抱き上げられた!?

 なんなんだ!?

 こいつは……

 まさか二重人格!?

 まだ赤ん坊だろ!?

 

「お……おい、ルゥ。このガ……子供は……?」


「うん、弟だよ。かわいいでしょ? まだ赤ちゃんなの」


「赤ちゃんって……さっきまで普通に話してたぞ!?」


「え? まだ赤ちゃんだから、ちゃんとは話せないよ? ね? ハーピーちゃん?」


「あううぅ」


 はあ!?

『あうう』だぁ!?

 さっきまで生意気な口叩いてただろ!?

 このガキ……

 ルゥに抱っこされて、ご機嫌に笑ってるぞ!?

 さては、こいつもルゥを……

 オレのライバルが一人増えたって事……か?

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