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魔族の理性と本能~後編~

「それは理性が邪魔をしたのだ。仕える王がいれば、その王に従うだろう? 王自身も自らの王位を守る為に、わたしや魔王様には従いたくないと思ったのだ。わたしも魔王様に出会った頃は種族王だったが、魔王様の圧倒的な強さの前に服従したのだ。理性が保てなくなるほどの力を見せつけられたからな。元々、わたしが種族王になったのは甥を守る為だった。魔王様なら甥を傷つけないと思ったというのもあっただろうな」


 理性と本能か……

 お父さんは、どんな事をしたら最恐の魔族だったハデスを服従させられたんだろう。

 ……怖くて訊けないな。


「ルゥの場合は魔族でも魔王でもない『聖女』という存在だという事が突然分かり、その力を見せつけられた。だから身構える事ができずに、一瞬で服従させられたのだろう。元々島にいた、わたしとオークとハーピーはルゥのかわいさに既に服従したも同然だったからひざまずかなかったがな」


 わたしのかわいさに服従?

 それで、毎日かわいがってくれたのかな?

 ……パパは、わたしを見てヨダレを垂らしていたけど?

 よく生きてこられたよ……

 大粒のキャンディ……

 今までありがとう。

 まだまだパパに食べられちゃいそうだから、これからもよろしく……


「だが、今でも犬猫がルゥを大切に想うのはルゥの優しさに触れたからというのもあるだろうな。あの二人は種族王になるには優し過ぎた。随分ルゥに癒されていたようだぞ?」


 わたしに癒されていた?

 わたしの方が癒されていたけど……

 モフモフでかわいくていい匂いがするんだよね。

 横になって、お腹を出して甘えてくる姿は最高にかわいいんだ。


「ルゥに恋愛感情ではなく癒しを求めているのが分かっていたから、近づく事を許したのだ」


 それで、いつも『犬猫はいいが』って言っていたんだね。

 あれ?

 でも、ベリアルをかわいがると嫌がるのは……?


「じゃあ、わたしがベリアルをかわいが……」


「うわあぁああああ!」


 ベリアルが慌ててわたしの話を遮った?

 どうしたのかな?

 でも……

 慌てたヒヨコちゃんもかわいいっ!

 ああ……

 撫でたい。

 吸いたい。


「ベリアル……ちょっとでいいから吸わせ……」


「だから! ハデスが怖いからダメだって言ってるだろおお!」


 ああ……

 慌てるヒヨコちゃん……

 かわい過ぎる。


「ベリアル……永遠に眠るか……?」


 でたっ!

 ハデスの『永遠に』っ!


「うわあぁ! ばあちゃん! 助けてくれええ!」

 

 ベリアルが飛んで逃げて、おばあちゃんの後ろに隠れたね。


 ベリアル……

 パパがいないから、おばあちゃんに助けてもらおうとしているね。


「あはは! 若いってのは、いいもんだなぁ!」


 おばあちゃんが楽しそうに笑っている。

 

 ベリアルもハデスも、もう何千年も生きているけど……?

 わたしも、前世と今世を合わせれば三十歳を超えているんだよね……

 若い……のかな?

 

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