嫉妬と魔王(6)
「え? デメテルちゃん? ポセイドンに言い寄られたって本当!?」
うわぁ……
お父様……
自分は好き勝手しているのに、お母様が誰かに好きって言われたら嫌なのかな?
「本当よ。『デメテルちゃんは美し過ぎて真珠貝に閉じ込めちゃいたい』って言っていたわ……(気持ち悪っ)」
お母様……
嫌だったんだね。
顔がひきつっているよ?
あれ?
今、小声で気持ち悪って言った?
「え? わたしにも『ヘラちゃんは美し過ぎて陸に上がると太陽が嫉妬するから深海に閉じ込めちゃいたい』って言っていたけど……(吐き気がしたわ)」
ヘラも小声で吐き気がしたって……?
ポセイドンも嫌われているのかな?
すごい言われようだよ。
「あらあら、ポセイドンったら皆に言っているの? 困ったちゃんね。後で火干ししてあげましょうね。うふふ」
ヘスティア……
綺麗な笑顔だけど……
日干しって何?
布団干しみたいな感じ?
何か怖い事なのかな?
「まあ、ポセイドンはいいとして。久しぶりに姉弟が揃ったわね」
ヘスティアが嬉しそうに話している。
ポセイドンはいいとして?
扱いが……
「そうだな。皆、変わらないな」
ハデスも嬉しそうだね。
「ハデスは、ずっとこの島にいるんでしょう?」
「ルゥがいるからな」
「幸せなのね」
「ああ、穏やかに暮らしている」
ハデスの言葉に心が熱くなる。
これからもずっと幸せに暮らしていきたいよ。
「ハデスは不器用だから心配していたの。ゼウスとポセイドンはどうでもいいけど、ハデスは大切な弟だから」
ヘスティアは、お父様とポセイドンと何かあったのかな?
「ヘスティア? ゼウス達と何かあったのか? 前より嫌っているようだが……」
ハデスも同じ事を考えていたんだね。
前よりっていう事は、ハデスが天界にいた頃もお父様達を嫌っていたのかな?
「……ちょっと、ねぇ? ここでは言えないわ。そうよね? ゼウス? ルゥに聞かせてもいいのかしら?」
「ダメダメ!! ルーに尊敬されるお父様になるんだから! 内緒だよ! 言っちゃダメ!」
うわぁ……
お父様が必死になっている。
かなりの事をしたんだね。
「さて、ヘラ? わたし達は帰りましょう」
ヘスティアがヘラと手を繋ぐ。
「そうね。ポセイドンが火干しにされるところを見ないとね」
ヘラとヘスティアが楽しそうに笑い合っている。
「じゃあねルゥ。皆さん、お騒がせしました」
ヘラ……
来た時とは別人みたいに穏やかだね。
あれ?
でも……
「ちょっと、ちょっとぉ! ヘスティアちゃん!? この神力のヒモを! ちょっとぉ!」
お父様……
縛られたままだけど、このヒモって取れるのかな?
この慌て方を見る限り、前にも縛られたまま放置されたみたいだね。
「さてルゥ、家に入りましょう?」
お母様が手を差し出しているけど……
「え? あ、でもお父様は?」
「残念だけど、このヒモはヘスティアじゃないと消せないの。ポセイドンを火干しし終えたら消してくれるはずよ?」
「日干しって何?」
「軽い日光浴よ? さあ、中に入りましょうね? 変態がうつったら大変よ?」
お母様……
今、お父様を変態って言ったよね?
「待って! ヘラちゃん! ああ間違えた! デメテルちゃん!」
うわぁ……
お父様……
最悪だ……
名前を間違えたよ。
「ルゥ、皆さん。先に中に行って? お母様はゼウスとお話があるから」
お母様……
笑っているけど目が怖いよ?
「ゼウスも今から火干ししてあげるわ」
お母様の声が低くなっている。
「ちょ……ちょっと……デメテルちゃん!?」
お父様が慌てているね。
でも、お父様が悪いよ?
「ルゥ、急いで家に入ろうか……」
ハデス……
助けてあげないんだね。
「ぎやあああ!」
家に入るとお父様の悲鳴が聞こえてくる。
ああ……
口は災いの元……か。
いや、違うね。
日頃の行いだね。
……日干しって何かな?




