嫉妬と魔王(4)
「落ち着いて、ヘラ。本当にペルセポネなの。愚かなゼウスになんか絶対にお嫁にあげないわ?」
お母様が説明しているけど……
普通にお父様の悪口を言っているような……
「ルゥはわたしの妻だ。落ち着け、あんな女好きに渡すはずがない」
ハデスも悪口だよね……
「でも……ゼウスはこの小娘の絵姿を見て、今まで見た事がないくらい鼻の下を伸ばしていたのよ? 実の娘にそんな事を……いや、ゼウスならあり得るかも……」
ヘラまで悪口を言っている。
本当にお父様の事が好きなのかな?
「よく考えて? ハデスとゼウスだったら、絶対にハデスでしょう?」
え?
お母様?
「そうね。絶対ハデスだわ」
ヘラ……
即答した?
お父様の事が好きなんだよね?
「じゃあ、この赤ん坊は? ゼウスの子でしょう?」
「ヘラ、違うわ。オークの子よ?」
「オークの子? あ……わたし……ごめんなさい。あなたみたいに綺麗な魔族が、あのダメでクズなゼウスを好きになるはずないわよね」
ヘラが分かってくれたみたいだけど……
ママは怒っていないのかな?
それにしてもダメなゼウスって……?
「何だ。やっと分かったか。わたしが、あんな弱っちい奴に惚れるはずがないだろ?」
ママまで悪口を言っているよ。
お父様は一応神様だよ?
「そうよね。弱くてすぐ泣いて、怒られそうになると逃げて女好きで……まともなところがひとつも見当たらないわね」
ヘラが一番悪く言っているような……
本当に好きなんだよね?
「その通りよ。後先考えずに行動して、皆を巻き込んで不幸にするのよ? 最低よ」
お母様……
最低って言った……
もしかして、お父様の事が嫌いなのかな?
「……でも、だから守ってあげたくなるのよね」
え?
ヘラもお母様と同じようにダメなお父様が好きなのかな?
「そうなのよ。わたしがいないとダメだと思って、つい甘やかしちゃうの」
お母様……
やっぱり……
いつもかなり甘やかしているよね。
だからお父様は、どんどんダメになっていくんだ。
「わたしも分かるぞ! オークが泣いていると胸がギューッてなるんだ。甘やかしたくて仕方なくなるんだ」
ママまで!?
皆、ダメ男が好きなの?
「わたしは、ハデスみたいな男性が好きだけどな……」
あ……
言っちゃった。
「え? ルゥ……だったわね。見る目があるわね。ゼウスは顔は良いけど性格がダメなのよ。ハデスは、おすすめよ?」
ヘラが笑っている。
うわぁ……
すごく綺麗だ。
笑顔がキラキラ輝いている。
「皆さん、本当にお騒がせしました」
ヘラは帰るのかな?
「結界を張り直さないといけないわね。ゼウスにやらせる? たまには役に立ってもらいたいわ」
お母様……
その言い方……
「わたしがやるわ。壊したのはわたしだから。それに、ゼウスにやらせると見返りを要求するでしょう?」
見返り?
神様が欲しがる見返りって何かな?
「ヘラは何を要求されるの?」
「え? それは、から……」
「あああぁぁぁあああっ!!」
ヘラの話をお母様が遮った?
しかも、かなり必死に……
「……お母様? どうしたの?」
「あああ……喉が……あの……おかしいなって……」
「喉が痛いの? わたしが治すよ?」
喉が痛いのに天界から来てもらっちゃった。
申し訳ないよ……
「え? あの……叫んだら治ったみたい」
「よかった。痛くなったらすぐに言ってね?」
「ルゥ……ありがとう」
ニコニコのお母様が抱きしめてくれる。
「ええ!? 結婚しているのに、まだなの? ゼウスとは、ずいぶん違うのね」
「そうなんだ。ルゥはかわいいから、まだ子の授かり方を知らないんだ」
ヘラとママが何か話しているけど、遠くてよく聞こえないな……
何を話しているんだろう?
二人とも笑っている。
仲良くなったのかな?




