賑やかなリビングで
着替えてリビングに入ると、ウェアウルフのお兄ちゃんがぐったりしている。
どうしたのかな?
疲れちゃったかな?
「お兄ちゃん大丈夫? 具合が悪い?」
「ああ……二日酔いです」
すごくだるそうだよ。
二日酔いって光の力で治せるのかな?
「二日酔い? お酒をいっぱい呑んだの?」
「いや、一口呑んだら眠くなったようだ」
ハデスが教えてくれたけど……
「情けないです。乾杯の一口だけなら平気かと思ったのですが……わたしはお酒よりジュースの方が好きなのです」
勇ましいウェアウルフ王だったのにジュースの方が好き!?
「かわいい……」
なんて言っている場合じゃないかな?
「え? かわいい……ですか?」
「うん。だってかわいいよ? お酒よりジュースの方が好きなんて、すごくかわいいよ」
「聖女様……お優しい……うぅ」
うわぁ……
頭がかなり痛いみたい。
「頭に触るよ? 痛いの痛いのだあれもいない遠くのお山に飛んで行け!」
どうかな?
光の力で治せたかな?
「あれ? 治っている……? すごい……あぁ、眠くなってきました」
「うん。光の力を使われると眠くなっちゃうみたいなんだよね。……あれ? 寝ちゃったかな? 前の時に寝なかったのは気が張っていたから……とか?」
腰を痛めた時には寝なかったけど……
わたしの為に頑張って寝ないようにしてくれたんだね。
今は幸せの島でくつろげているっていう事かな?
よかった。
幸せの島がお兄ちゃんの家だからね。
ソファーで眠るお兄ちゃんは楽しい夢を見ているのかニコニコしている。
先にご飯にさせてもらおうかな。
お兄ちゃんは肉食だからわたしと同じ物は食べないだろうし……
「うわあぁ! 今日は卵のスープだ!」
パパが作るスープは卵がフワフワでおいしいんだよね。
「ルゥが元気になるように卵をたくさん入れたからね」
パパが嬉しそうに笑っている。
昨日体力作りをしようとしたけど、ハデスとお父さんに止められたんだよね。
今日こそは頑張ろう。
頑張ってあん姉みたいに強くなるんだ。
「パパ、どうやったら筋肉ムキムキになれるかな?」
パパはポヨポヨから、あっという間にムキムキになっていたよね?
「ルゥは、あん姉みたいになりたいんだね? そうだねぇ食べ物……あ、いや……うーん」
あぁ……
肉っていう事かな?
何の肉かは考えないでおこう……
「月海はまだ魔素にやられた身体が元に戻らないから……しばらくはお散歩をして温泉に入って、たくさん寝て食べたらいいと思うよ?」
お父さんがリビングに入って来ながら話しているけど……
あれ?
ベリアルがいない。
まさか……
ハデスに消されていないよね?
「えっと……お父さん、ベリアルは……?」
生きているよね?
大丈夫だよね?
「え? また後で来るって言って帰ったよ?」
また後で?
よかった。
生きていたんだ。
でも、どうしてハデスは怒ったのかな?
「ははは! まぁ、あれだけハデスに怒られたら慌てて帰るよな」
ママが笑っている。
「何があったの?」
ママなら教えてくれるかな?
「ん? あぁ、ルゥとハデスが仲良くしようとしたのを邪魔したから怒られたんだ。本当に間が悪いよな」
「え? そんな事で怒られちゃったの? でも、わたしとハデスはいつも仲良しだよ?」
いつもは、あんなに怒らないけど。
「ははは! ルゥはかわいいな……ハデスも大変だ」
ママが面白そうに笑っている?
ハデスが大変って、どういう事かな?
「ルゥ……もう少し食べた方がいい。早く元気になって、皆でドワーフの温泉に行こう」
ハデスが気まずそうな表情でスープのおかわりをくれた?
やっぱりわたしには全然分からないよ。
でも温泉に行けるのは嬉しいよね。
ドワーフのおじいちゃんの作った温泉は、いろんな場所にあるんだ。
温泉三昧か……
そうだ。
ベリアルも誘って皆で行ったら楽しいかも。
でもハデスに怒られたばかりだから嫌がるかな?




