朝からドキドキ
朝か……
フカフカのベットで目を覚ます。
温かい。
ハデスが抱きしめてくれている。
あれ?
ハデス……
ちょっとお酒の匂いがする。
よく眠っているね……
綺麗だな。
長いまつげに整った顔立ち。
見ているだけでドキドキする。
誰も……見ていないよね?
キョロキョロ周りを見る。
よし、誰もいないね。
ハデスもぐっすり眠っているし。
ハデスのほっぺたに口づけをする。
うわぁ……
これはちょっと恥ずかしいかも。
そっと部屋を出よう。
音がしないように、ゆっくりベットから出ないと……
「フッ……」
ハデスが笑った!?
え?
まさか……
「すまない。我慢できなくて、笑ってしまった……」
「ハ……ハデス!? いつから起きていたの?」
「最初から……だな」
最初から!?
うわぁ!
恥ずかしい!
あれ?
前にも同じ事をしてバレていたよね?
恥ずかし過ぎる……
ハデスが、真っ赤になってうつむいているわたしの髪を撫でてくれる。
「ルゥ……かわいいぞ……?」
優しく抱きしめてくれるハデスの温かさにドキドキする。
あぁ……幸せ。
でも、恥ずかしくて顔を見られない。
ぐぅぅ
……!?
嫌だ!
わたしのお腹が鳴ったの?
こんな時に!
「プッ……」
ハデスが笑うのを我慢して吹き出した?
恥ずかし過ぎる……
もう嫌だ……
「ルゥは赤ん坊のようにかわいいな」
赤ちゃん!?
うぅ……
恥ずかしい。
「ルゥのそういうところが好きだぞ?」
どういうところ!?
お腹が『ぐぅ』って鳴るところ?
うつむいているわたしの唇に、優しく口づけをしてくれる。
「ルゥは……赤ん坊がどうやって来るか知っているか?」
え?
赤ちゃん?
「コウノトリが連れて来てくれるんだよ? でも、この世界では違うんだよね? よく分からないけど……」
「知りたいか? どうやって赤ん坊が来るかを……」
「え? 教えてくれるの?」
ずっと教えてもらえなかったけど、やっと教えてもらえるんだね。
「……ルゥ」
ハデスが真剣な顔をして、もう一度口づけをする。
うわぁ……
かっこいい……
ドキドキする。
何だろう?
いつもと少し違う……?
「今帰ったぞ! あれ? いない? 早く来過ぎたか?」
あれ?
ベリアルの声……?
帰って来てくれたんだ。
「おい! まだ寝てるのか? 第三地区の奴らは早起きで……」
ベリアルが話しながら寝室の扉を開けたね。
あれ?
ベリアルと、わたしを抱きしめているハデスが無言で見つめ合っている?
あぁ……
ヒヨコちゃんのつぶらな瞳……
かわい過ぎる。
あれ?
ベリアルの表情が険しくなっていく?
「あ……すまない」
ベリアルが静かに扉を閉じた?
え?
何が『すまない』?
「ルゥ……少し待っていなさい」
ハデスが部屋から出て行ったけど、怒っていたような……
「うわあぁぁ!」
……!?
ベリアルの叫び声?
ハデスが寝室に戻って来たけどベリアルの姿が見えないよ?
「ルゥ、おばあさんがチョコレートクッキーを持たせてくれたぞ?」
え?
ベリアルは?
「あ……うん。あの、ベリアルは?」
すごい悲鳴だったけど……?
「魔王様にもお土産があったから届けに行った」
あ……
そうなんだね。
生きている……よね?
届けに行たまま永遠に帰って来ないとかないよね?
「着替えてリビングに行こう。オーク達も起きて来たからな」
さっきのベリアルの悲鳴で起きて来たんじゃ……?
「……ハデス、赤ちゃんの事は?」
どうやったら来るの?
「また……今度だな……」
え?
また今度?
うぅ……
やっと教えてもらえそうだったのに。
残念……




