表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

193/402

マンドラゴラの秘密(3)

「よく分からねぇんだけど……天ちゃんが言うには第三地区で産まれた奴は、天使に近いから死後に魂だけこの世界に来るらしいんだ」


 マンドラゴラの姿の野田のおじいちゃんが教えてくれたけど……

 天使に近い?

 どういう事?

 そういえば冥界は亡くなった天使が行く所だったよね。

 そんな感じなのかな?

『天ちゃん』か……

 田中のおじいちゃんは天ちゃんって呼ばれていたんだ。

 神様だから天ちゃん?

 田中のおじいちゃんらしいね。

 

「今は、他の皆はどこにいるの? 皆一緒にいるの?」


 安全に暮らしているのかな?

 魂だから魔素には、やられないのかな?


「オレが来た時には、この世界に第三地区があったんだ」


 おばあちゃん……?

『第三地区』って……

 前世の集落と同じ呼び方?


「向こうの集落で生まれ育った奴は、死ぬと皆()()に来るみてぇだなぁ」


 どういう事?

 繋がっているの?


「月海、醤油を作る国があるのを覚えてるか? あれはこの世界の第三地区で作った物なんだ」


 ……そんな。

 これってどういう事なの?

 神様に会ったら訊かないと。

 あれ?

 でも、魂だけがこっちに来たんだよね?

 じゃあイナンナの魂はどうなったの?

 イナンナは集落で産まれたわけじゃない。

 まさか……消え……

 そんな……

 

「おばあちゃん……」


 ダメだ。

 訊くのが怖い……

 もしイナンナの魂がこの世界に来ていなかったら……

 消えたっていう事になるの?

 わたしには魂の事は分からないけど、イナンナの魂がずっと子孫に受け継がれるなんてできるの?

 どうやって?

 群馬でおばあちゃんがお父さんを産んだ時、おばあちゃんの中にいるイナンナの魂がお父さんの中にもいた?

 それとも、産まれてきたお父さんにイナンナの魂が移動した?

 でも、おばあちゃんは出産後も生きていたわけだし……

 魂は分けられるっていう事?


「月海……イナンナは今も……いや。月海……月海はなぁ、オレの孫だ。オレの世界一かわいい孫だ」

 

「おばあちゃん……わたし……」


 わたしの魂はおばあちゃんの孫じゃないのに……

 涙が止まらない。

 こんなわたしをまだ孫だって言ってくれるなんて。

 ありがとう。

 おばあちゃん……

 ありがとう。


「星治……オレら家族は、イナンナの魂を代々受け継いでいるらしいけどなぁ。オレの母ちゃんもばあちゃんもこの世界に来てるぞ?」


「おばあちゃんとひいおばあちゃんが……? じゃあ、皆に会えるの?」


 お父さんが嬉しそうにしているけど……

 イナンナの魂を代々受け継いでいるはずなのに、この世界に来ている?

 それってどういう事?

 イナンナの魂は何個にも分かれている……とか?

 でもそんな事ができるの?

 ハデスとお母様の話から考えると身体に魂が入らないと死産に……

 あれ?

 ……頭がボーっとする。


 ……?

 わたし……

 今、何か大切な事を考えていたような……

 うーん……?

 頭にモヤがかかったみたいになっている。


「ああ……天ちゃんに『マンドラゴラにしてやるから月海と陽太のそばに行くか』って言われてなぁ。それでオレらが来たんだ。また月海に会えるなんてなぁ」


 え……

 あの時イフリート王子に焼かれたマンドラゴラ達って……

 まさか……


「おばあちゃん……あの時、焼かれたマンドラゴラって……」


 集落の皆じゃないよね?


「あれは普通のマンドラゴラだ。星治以外のマンドラゴラは皆焼かれてなぁ。その後、オレら三人が天ちゃんの力で幸せの島に来たんだ」


 そうだったの?

 集落の皆が焼かれたわけじゃないんだね。

 焼かれたマンドラゴラ達は熱くなかったかな?

 クローンで増やしたってお父さんは言っていたけど……

 どうやって動いていたんだろう?

 皆、意思を持っているように見えたよ。

 クローンなんてわたしには難しくてよく分からない……

 でも……


「吉田のおじいちゃん、野田のおじいちゃん……おばあちゃん。また会えて嬉しいよ」


「ルー……ごめんな。ずっと黙ってて……ごめんな」


 野田のおじいちゃん……

 ピーちゃんの事で辛かったのに謝る事なんてないよ。

 

「ルー、よく頑張ったなぁ。これからは、じいちゃん達が守ってやるからなぁ」


 吉田のおじいちゃん。

 前世の時と変わらない。

 いつも笑顔が素敵だったよね。


「うう……おばあちゃん! おじいちゃん……」


 皆で抱きしめ合うとマンドラゴラの身体が小さくて……

 もう人間の姿じゃない事に胸が痛む。

 でも、また会えて嬉しい。

 あぁ……

 涙が止まらないよ……


 この世界は不思議な事ばかりだ。

 それだけじゃなくて、苦しくて辛くて……

 でも幸せな事もあって……


 この世界に来て……

 ずっと謝りたかったおばあちゃんにも、赤ちゃんの時に離れ離れになったお父さんにも会えた。

 お母さん……

 お母さんもいてくれたら……


 そこまで望んだらダメかな?


「いつか月海と星治が第三地区に来るのを皆、楽しみにしてたんだ。生クリームもあるぞ?」


 マンドラゴラの姿なのにおばあちゃんの声で話しているなんて……

 やっぱり見慣れないね。


「生クリーム!? あるのか!?」


 ベリアルのつぶらな瞳がキラキラ輝いている。

 そんなに生クリームが食べたかったんだね。


「ルゥ、明日行ってみるか? 明日はウェアウルフが来る日だからな。一緒に連れて行きたいだろう?」


 ハデス、嬉しいよ。

 明日か……

 集落のおじいちゃんとおばあちゃん達にまた会えるんだ。


「うん! 久しぶりに皆に会えるんだね。すごく嬉しいよ!」


「月海、醤油だけじゃねーぞ? 焼きまんじゅうも、こんにゃくも、うどんもあるぞ?」


「ええ!? 焼きまんじゅう……こんにゃく……うどん……!?」


 全部、大好物だよ。

 嬉しい!

 明日は皆にも会えるし、おいしい物もたくさん食べられそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ