マンドラゴラの秘密(1)
「では、我らは魔王様のお手伝いをしてきます」
マンドラゴラの子供達と遊んでくれていたヴォジャノーイ族のおじちゃん達が、魔王城に仕事に行った。
子供達が残念そうにしているね。
「余ったプリンを皆で食べようか?」
子供達と二個目のプリンを食べ始める。
いつもは一日ひとつだからすごく喜んでいるね。
かわいいな。
本当の弟と妹みたい。
「ベリアルも、もうひとつ食べる?」
「いいのか?」
ヒヨコちゃんの姿のベリアルが瞳を輝かせている。
堕天使だったなんて信じられないくらい、かわいいっ!
「食べさせてあげるね?」
スプーンで食べさせてあげると、クチバシをモグモグさせている。
ああ……
何てかわいいんだろう。
ずっと見ていられる。
「お前……もう大丈夫か?」
「え? わたし?」
もしかして、ペルセポネだった事を心配してくれたのかな?
優しいんだね……
「ベリアル、ありがとう。心配してくれたんだね」
「な……!? オレは心配なんかしてないぞ! ああ……あれだ。プリンを食べられなくなったら困るからだ!」
慌てちゃって……
かわいいな。
「生クリームがあれば……もっと、とろけてなめらかなプリンが作れるんだけど。飾り付けもかわいくできるし」
今プリン作りで使っているヤギのミルクは、ばあばが腐らないようにしてたくさん置いていってくれた物なんだよね。
ヤギのミルクは味が濃くて、おいしいんだ。
生クリームってどうやって作るんだろう?
今までこの世界で食べたケーキは、バタークリームみたいな感じだったんだよね。
冷蔵庫がないからかな?
バタークリームは日持ちするからね。
この世界には牛乳はないのかな?
ヤギのミルクからでも生クリームって作れるのかな?
「生クリームって何だ? 旨いのか?」
ベリアルが瞳を輝かせている。
かわいいっ!
食べさせてあげたいけど……
「白くてね、泡立てるとフワフワで甘くておいしいの。でも作り方が分からないんだよね」
お父さんなら知っているかな?
あ……
そういえば醤油を作っている国があったよね。
そこに行けば、もしかしたらあるかも。
「白くてフワフワ……食べたい……」
ベリアル……?
どうしたのかな?
もしかして生クリームが食べたいのかな?
「お父さんに訊けば、もしかしたら分かるかも……」
「何!? 本当か! 行って来る!」
ベリアルが飛んで行っちゃった。
甘い物が大好きなんだよね。
空を飛ぶ真ん丸のヒヨコちゃん……
身体が重そうだね。
かわい過ぎる……
「姫様? 生クリームとは姫様の好物ですか?」
魚族長も食べたいのかな?
「うん。すごくおいしいの。皆で食べられたら嬉しいんだけど……」
「皆で……生クリームか……姫様、それは何でできているのですか?」
「牛のミルクなんだけど。この世界にも牛はいるのかな?」
「ウシ? 初めて聞きました」
「ヤギのミルクでも、できるとは思うんだけど……作り方が分からないんだよね」
「そうでしたか……液体という事なら……水の精霊に頼んでみては?」
「水の精霊に? ネーレウスのおじいちゃん……?」
そうか、液体なら。
でも作り方が分からないから……
お父さんに訊いてみようかな?
もうベリアルが訊いてくれたかな?
「キュキュイ?」
あれ?
マンドラゴラの赤ちゃんが何か言っているけど……
何て言っているのかな?
「キュキュイ」
……?
なんだろう?
何か教えてくれているみたいだけど。
うーん……
「ごめんね……何て言っているのか分からないよ」
「……」
ああ……
赤ちゃんが黙っちゃった。
怒っちゃったのかな?
悲しくなっちゃったのかな?
ウェアウルフ族ならマンドラゴラの言葉が分かるんだけど、今はいないし……
「ルー、第三地区……神落ち地区に行くか?」
……!?
え?
今……
赤ちゃんが話したの!?




