知らされた真実(2)
「ハデスは、いつから知っていたの……? わたしの魂が……」
「ルゥの誕生の宴の前日だ……」
最近……
魂の事を知る前に、わたしを好きになってくれたんだよね……?
……でももしかしたら、わたしを好きになってくれたわけじゃないのかも。
「ルゥ……わたしの気持ちはずっと伝えてきた……わたしがどれだけルゥを大切に想っているかを……」
ハデスの気持ち?
ずっと……?
「愛しているよ……ルゥ」
……ハデスはずっとわたしを守ってくれた。
ずっと……
でも、それはわたしがお父さんの娘で……
きっと、わたしの中に昔の大切な女性の姿を見ていたんだ。
わたしを愛していたんじゃない……?
心が壊れてしまいそうだ。
ハデスを信じられない自分に腹が立つ。
でも……
わたしは自信がないんだ。
ハデスが本当にわたしを見てくれているって思えないんだ。
前世の月海の時からそうだった。
常に、心がすごく寂しくて乾いていた……
わたしの心は身体に自信がなくて……
いつも身体を壊してしまいそうで怖かった。
そして、わたしの身体は心が怖かった。
いつか心に全てを奪われそうで……
ずっとあった違和感。
自分で自分を信じられない日々……
油断したら自分の心の深い部分に、身体を奪われてしまいそうな恐怖。
何もかも奪われたら……
その時に『月海はいらない』と言われたら……?
わたしの身体なのに、わたしのものじゃない?
ずっとそんな感覚だった。
……今はもう月海の身体はない。
今度はルゥの身体を奪われる……?
今まで、わたしを見てくれていると思っていたハデスはわたしの中の魂を見ていた……?
違う……
わたしがルゥの身体を奪ったんだ……
「ルゥ……?」
消えてしまいたい。
もう……
息をするのも嫌だ……
「ルゥ……本当は話したくなかった。ルゥを喪いそうで怖かった……だが、ルゥと幸せになりたかった。偽りの幸せは、すぐに壊れる……だから全てを話して本当の幸せを手に入れたかった」
本当の幸せ……?
「わたしの心はルゥだけのものだ」
わたしだけのもの?
嘘だ……
全部嘘だ。
この世界は全部嘘だ。
偽者のわたし
偽者のママ
偽者のパパ
偽者のお父さん
偽者の……
違う。
わたしだけが偽者……
……ああ。
心が壊れていくのが分かる。
心だけじゃない、身体も……
もう嫌だ……
何もかも……
わたしは……誰?
誰も本当のわたしを見てくれない。
……本当のわたしって何?
わたしにも分からない……
本当のわたし……?
わたしの心の奥深くにいるのは誰なの?
「ルゥ……わたしが見えるか? ボーっとして……大丈夫か?」
ルゥ?
ルゥ……
わたし?
誰?
わたしは……ペルセポネ。
そう。
わたしはペルセポネ。
冥界でハデスと暮らしていた。
不器用で優しいハデス。
わたしのハデス。
魔族でもいい……
あなたのそばにいたい。
わたしは……
あなたのそばにいる。
そう。
わたしはルゥ。
強くて優しいじいじ……
大好きだよ。
誰にも奪われたくない。
じいじはわたしの最愛の……
頭が痛い。
これ以上考えたら頭が割れそうだ……
「ルゥ……大丈夫か? もう何も考えるな、分かるか? わたしはルゥのママだろ?」
ママ……?
「そういう事だ」
……え?
ママ?
どういう事?
「だから、考えても仕方ないって事だ」
考えても仕方ない?
「だって、わたしはルゥのママだろ?」
わたしの……ママ?
「わたしはパパじゃないし、ばばあでもない。ママだろ?」
「……え? ……うん」
ママ……?
「そういう事だ」
え?
どういう事?
ママ……
泣きそうな顔をしている。
でも頑張って微笑もうとしている。
「難しく考えるな。わたしがルゥをルゥだって言うんだから、ルゥだろ? ……あれ? ルゥがルゥだからルゥで……ん?」
……ママ。
難しい事が苦手だから……
でも頑張って考えてくれている……?
わたしを励ましてくれているの?
一生懸命になって……
「ふふっ……」
あれ……?
わたしが笑ったの?
「……あははは」
不思議だ……
さっきまで辛くて堪らなかったのに。
声を出して笑っている……?
「ルゥ? 何がおかしいんだ? わたしにも教えてくれ」
ママ。
何もおかしくなんてないよ。
おかしくて笑ったんじゃない。
「幸せだから……笑ったの」
「ん? 幸せだから笑ったのか? じゃあわたしも笑うぞ? だって、わたしは世界一の幸せ者だからな! ルゥとハーピーちゃんのママのわたしより幸せな奴がいるか?」
ママ……
ママは太陽みたいだ。
眩しくてキラキラしている。
わたしは……
皆の優しさに甘えてもいいのかな……?




