知らされた真実(1)
「月海……話があるんだ」
お父さん?
プリンを食べる宴は、まだ始まらないけど……
あれ?
天使がいる……
白い髪に、青い瞳……
あの時の……
砂嵐みたいな中に見えた女性……?
頭がボーっとする。
身体がフワフワして何も考えられない。
……わたしは知っている。
この綺麗な天使を……
心がギュッと締めつけられているみたいだ。
そして……
温かい気持ち。
ばあばに対する気持ちに似ている?
「お母様……ごめんなさい。わたし……お母様を苦しめてしまいました」
わたしが話しているの……?
確かにわたしの口から出ている言葉だけど……
これは……
わたしの心が話しているの?
「ペルセポネ……!? あなたなの? あぁ……お母様が悪かったわ」
天使がわたしを抱きしめた?
あれ?
この匂いは……
デメテル?
それに『お母様』って……?
「デメテル……? あれ? わたし……」
やっぱり、わたし……
おかしいよ。
ずっと前から思っていた。
わたしは……
イナンナじゃない……
でもわたしは、ばあばを懐かしくて温かく感じて……
この気持ちは何なの?
「わたし……おかしいよ。どうしちゃったの? 違う。そうじゃない。わたしはお父さんの娘だよ……違うんだよ」
涙が溢れてくる。
怖い。
怖いよ。
わたしは……誰?
「月海……月海はお父さんの宝物だよ。世界中で一番大切な宝物だ」
デメテルに抱きしめられているわたしの髪を、お父さんが撫でてくれる。
「落ち着いて聞いて欲しいんだ。月海……月海はね、聖女の身体を奪い取ってはいなかったんだ」
え?
お父さん……?
「聖女の身体には魂がなかったらしい。……そして、集落の月海の身体にも魂がなかったんだ」
魂が……
なかった……?
どういう事?
「聖女の身体にも月海の身体にも強い神力があって、普通の魂では入れなかったらしいんだ。デメテルは……神との間に授かった娘さんを亡くしてしまってね……空っぽの月海の身体に娘さんの魂を入れたらしい」
デメテルと神様の娘……
まさか……
それが……
そんな……
じゃあ、わたしは……?
「月海は……月海だよ? お父さんのかわいい娘で、おばあちゃんの頑張りやさんの孫で……だから、月海は月海なんだよ? 今までと何も変わらない……」
何も変わらない……?
でも、わたしの魂はお父さんの娘じゃないっていう事だよ?
それなのに何も変わらないはずないよ……
「そうだぞ? ルゥはルゥだろ? ルゥには家族がいっぱいいるってだけだ。分かるか? ルゥのママはわたしだろ? パパはオークで、お父さんは魔王だろ? あと……ドラゴンのばばあとじいちゃんと、それから……」
「キュキュイ!」
「ん? 忘れてないぞ? マンドラゴラ達は弟と妹か……あとは、ほらハーピーちゃんだ」
ママ……?
「一番大事な奴を忘れていたな。なぁ、ハデス?」
ハデス……
わたし……
怖いよ。
わたしは偽者だったんだ。
どこにいても本物じゃなかった……
月海もルゥも全部……
「ルゥ……おいで」
ハデスが抱きしめてくれる。
「ううっ……」
涙が止まらない。
どうしたらいいの?
わたしは……
偽者……
「ルゥ、もうひとつ話さなければいけない事がある。ルゥの魂のペルセポネはわたしの妻だった」
……?
わたしの魂……
ペルセ……?
妻?
ハデスは、わたしの魂を好きになった?
わたしを好きになってくれたんじゃなかった……?




