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母としてのデメテル(1)

今回は、ハデスが主役です。

 魔王様をハーピーの家に連れて来ると、デメテルが元の天族の姿に戻る。

 白く美しい髪。

 青い瞳。

 ペルセポネによく似ている。

 

 今、ハーピーの家にいるのは魔王様とデメテル、ハーピーとその息子、ベリアル、それからわたしの六人。


「ハデス……? えっと……何の話かな?」


 魔王様……

 突然呼び出してしまい申し訳ないが……

 これから聞く話に耐えられるだろうか。


「そうだぞ? どうしたんだ? ハデスの知り合いの天族か?」


 ハーピーはルゥを誰にも取られたくないと言っていたからな。

 暴れださなければいいが……


「わたしは、ハデスの姉のデメテルです。突然呼び出してしまい申し訳ありません」


 デメテルがゆっくり話し始めた……


「ハデスのお姉さんでしたか……はじめまして。いつもハデスにはお世話に……いや、挨拶に来られたのではなさそうですね」


 魔王様……

 わたしの口からはとても言えません。

 デメテル……

 すまない。

 黙っている事しかできないわたしを赦してくれ。

 

「はい……ハーピーも突然ごめんなさい」


「ハデスの姉ちゃんなら、わたしの家族も同じだ。気を遣う事はないぞ?」


 ハーピー……

 どうか最後まで落ち着いて聞いてくれ。


「実は……お二人に話さなければいけない事があります」


「わたしと魔王にか? 何だ?」

 

「ルゥの事です」


「ルゥ? まさかハデスとルゥを天界に連れて行くなんて言わないよな?」


「そんな……月海はボクの娘です。困ります」


 魔王様……

 

「……セージ、謝らなければいけない事があります」


「どうしてボクの名前を?」


「それは、わたしが異世界の集落に出入りしていたからです」


「え? 集落に? どうして?」


「出入りしていたと言っても魂の一部を飛ばしていただけで身体自体はもう数千年間、行ってはいません」


「魂の一部を飛ばす? 何の為に? イナンナを大天使から守る為?」


「わたしは娘のペルセポネの魂を守る為に……そして、夫である神の愚行による被害者を増やさない為に集落に出入りしていました」


「神の愚行……?」


「夫は……ゼウスは愚か者です。酷い事ばかりして来ました」


「酷い事?」


「ルゥ……あの子は……わたしの娘、ペルセポネなのです」


「え? ……月海……の……事……?」


「自害した娘の魂を異世界に隠しました。いつか『人間と魔族の世界』に娘の魂に耐えられる身体が見つかれば、その身体に入れさせてもらおうと考えていました。もちろん魂を持たない身体に……誰かの幸せを奪い取ろうとは考えていませんでした。ですが、異世界の集落に産まれてきたのです。魂を持たない神力のある身体が……」


「……まさか、それが……月海? そんな……」


「ゼウスは異世界をさまよう娘を不憫に思い、ルーの身体に魂を入れてしまったのです」


「月海……嘘だ。月海に魂がなかった? どうして……」


「時々あるのです。身体に魂がついていけない時に……ルーは天族に近い身体を持っていました」


「イナンナの子孫だから……?」


 魔王様……

 それは違います。

 イナンナが産んだ子がルゥなのです。

 魔王様が集落で結婚したのは、魂がないイナンナの身体だったのです。


 本当の事は絶対に言ってはいけない。

 わたしはルゥを喪いたくない。

 ただ黙って聞いている事しかできないとは……

 情けない……

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